2010年9月28日(火)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
満身創痍(そうい)で地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」のカプセルなどの展示が各地で続いています。パラシュートなどの実物を目にすると、文字通り感動します▼宇宙航空研究開発機構名誉教授の的川泰宣さんは近著『小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡』で、「はやぶさ」を「宇宙開発史上最高の名優」と誇っています。名優とはよくいったものです▼世界初の仕事に数々挑戦し、帰路のエンジンが故障するなどの絶体絶命のピンチは一度や二度ではありません。そのたびに奇跡的に乗り越えてきた「はやぶさ」は、さながら映画のヒーローです。初めて宇宙に目を向けた人が全国的な規模で生まれたそうです▼的川さんは各地で大勢の人たちと出会って感じています。「これまで日本の宇宙活動をめぐって起きたことと全く違う現象が、『はやぶさ』については起きている」「『はやぶさ』を語ることで、何か日本の未来につながる大切なものが発見できるかもしれない」▼そして、「名優」を生みだした若い研究者たちへの期待と信頼を語ります。「運用室の若者を見ながら、私は確かに今、このグループが新しい時代を切り拓(ひら)きつつあることを感じました」と▼来年度予算の概算要求の優先度判定を行うにあたって、若手研究者と文科相とが今月、意見交換しています。そこでは、「はやぶさ」のカメラのチームリーダーが、今は無職など、厳しい雇用状況にあることなどが報じられています。新しいことに挑戦する若者を応援しない国に未来はありません。