2010年9月28日(火)「しんぶん赤旗」

主張

捜査資料改ざん

検察組織の責任、徹底追及を


 障害者団体を自称し、偽の証明書を使って郵便料金の割引制度を不正に利用して稼いでいた事件で、大阪地検特捜部の主任検事が捜査資料を改ざんしたとして逮捕され、追及を受けています。問題は、主任検事の上司の当時の特捜部長らが改ざんの事実を知りながら「不問」にしていたことです。

 特捜部長らは「意図的な改ざんでないと思った」などと弁解していますが、法と証拠にもとづいておこなわれるべき捜査で改ざんがおこなわれていたのに、その程度の認識とは恐れ入ります。主任検事だけでなく検察組織の責任が徹底して追及されるべきです。

捜査の原点が問われる

 主任検事による捜査資料の改ざんは、偽の証明書を発行したとして逮捕された厚生労働省の元係長から押収したフロッピーディスク(FD)の最終更新日時を、「6月1日」から「6月8日」に変更したというものです。6月上旬に元係長に証明書発行を命じたという筋書きで逮捕した厚労省元局長(大阪地裁で無罪確定)を追及するのに都合がよいよう直したと見られ、証拠として通用していれば元局長が有罪になっていた可能性もある重大な改ざんです。

 実際には、改ざん前のFDを記録した捜査報告書が検察事務官によって作成されていたため、公判に際して検察のなかでも食い違いが明らかになり、裁判を担当する公判検事が捜査を担当した主任検事を追及、主任検事も改ざんを認め、当時の特捜部長や副部長にも報告されていました。

 問題はその際の上司の対応です。主任検事の逮捕後、最高検察庁が繰り返し元部長などから聴取していますが、そのなかで明らかになったのが、元部長らが「意図的な改ざんとは報告を受けておらず、過失と思っていた」と、事実上改ざんを「不問」にしていたことを認めていることです。

 報告が「過失」と認識したものだったかどうかも疑問ですが、たとえ「過失」という報告であっても、犯罪の捜査にかかわる重大な資料の改ざんを、事実上見過ごした責任は免れません。物的証拠は供述の誤りやねつ造を防ぐ上でも重要な証拠であり、改ざんなどがあってはならないのは捜査の常識です。改ざんを知りながら「不問」にするなどというのは、捜査機関として絶対あってはなりません。

 物的証拠の改ざんを「不問」にしていたことから浮かび上がるのは、供述に頼ることが多い特捜部の捜査そのものへの疑問です。物的証拠の改ざんさえ不問にされていたということは、供述についてはもっとたびたび、ねつ造や改ざんがされていたのではないのか。特捜部の捜査についてはこれまでもその“強引さ”が問題になってきましたが、事態はまさに「特捜検察」そのものの存在にかかわる重大問題になっています。

検察の捜査だけでなく

 当時の特捜部長らが、大阪地検トップの検事正や上級の大阪高検にも「問題はない」と伝えていた疑いも出ています。検察の組織そのものにかかわる問題として徹底的に究明されるべきです。

 捜査は現在最高検察庁があたっていますが日本弁護士連合会は政府から独立した第三者機関が調査することを求め続けてきました。こうした提案を含め、事件の徹底究明の手だてをつくすべきです。





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