
2010年9月27日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPRESS
原告の心 伝えたい
薬害告発の小冊子に漫画
漫画家の卵 濵田 麻衣子さん (26)
漫画家を志す青年が描いた漫画小冊子『薬害イレッサの真実』が「薬害の真相を客観的に描かれていて分かりやすい」と評判になっています。作画を担当した兵庫県川西市の濵田麻衣子さん(26)の思いは…。(菅野尚夫)
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濵田さんが『薬害イレッサの真実』の作画を担当することになったのは、薬害イレッサ原告団・弁護団からの依頼を受けた京都精華大学事業推進室が発注してきたからです。
同大学芸術学部マンガ学科ストーリーマンガコースを卒業した濵田さんは、卒業後、同大学事業推進室を通していくつかの作画の仕事をしてきました。
「社会性の強いテーマを描いたのは初めてで大変勉強になりました」と話す濵田さん。
よく読んだ漫画は『北斗の拳』(原作・武論尊、作画・原哲夫)。「少女向けの漫画より、少年向けの漫画をよく読んでいました」
好きな漫画家は、『うしおととら』の藤田和日郎や『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦。同大学で「ストーリー漫画」を学んだこともあって、「長編ストーリー漫画が好きで自分でも長編漫画を描きたい」と思っています。
![]() (写真)小冊子『薬害イレッサの真実』 |
小さいときから人とおしゃべりをするよりも絵を描くのが好きでした。「漫画家は、人物の表情や感情を自分の好きなように描けること」から漫画家を志しました。
『薬害イレッサの真実』の当初のストーリーは、被害者を中心にした展開を考えていました。
薬害イレッサ訴訟の原告や弁護団とのやりとりをするなかで、新聞社に入社して2年目の記者を主人公に設定しました。
「そろそろ社会的な記事も書きたい」と思っていた記者が、原告団などが裁判所前などで配っていたビラを見て取材をはじめるというストーリーになりました。
「がん患者は、命が大切だと思っているのはみんな同じです。助かりたいと飲んだ薬で命を失ったことに納得がいかず、苦しんでいる被害者。悩んでいる原告の心を思いやってほしい」と、作画の狙いを語ります。
「向上心を忘れずに、うわべだけでない中身のあるものを作りたい」。プロデビューまでは道半ばですが、漫画家の「卵」から羽ばたくのを夢見ています。
連絡先
☆城北法律事務所
03(3988)4866
☆御池総合法律事務所
075(222)0011
中高生にもわかる
![]() (写真)薬害イレッサ訴訟をたたかう原告の近澤昭雄さん |
薬害イレッサ原告団代表の近澤昭雄さんの話 薬害イレッサの問題は難しいという声を聞きます。これまでも多くの人に理解してもらうために冊子を作りましたが、濵田さんに作画をお願いした漫画は「わかりやすくて中・高校生まで読んでもらえる」と評判です。これからも薬害や医療過誤の問題など社会的なテーマを描く仕事をしていただけることを期待します。
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薬害イレッサ訴訟 肺がんの抗がん剤「イレッサ」で重篤な間質性肺炎を起こして死亡した遺族らが国と製薬会社に損害賠償を求めた訴訟です。承認申請から5カ月あまりで販売されました。2002年7月、販売直後から間質性肺炎で亡くなる報告が相次ぎ、2010年3月末現在で810人が死亡しています。
東京地裁と大阪地裁で係争中。両地裁ともに結審。大阪地裁は来年2月に判決が予定されています。東京地裁は判決日が未定です。
お悩みHunter
進路、もう考えなくちゃだめ?
Q 高校2年の女子です。最近、専門学校や大学のダイレクトメールや資料が毎日のように届きます。進路を決めるのは、まだ早いと思って封も切らずにいたら、父親が「お前、どうするんだ」とうるさく言ってきます。いまの成績では卒業できるかどうか分からないのに…。でも、そろそろ進路を考えた方がいいのでしょうか。(17歳、女性)
目標持つと生活に張りが出る
A あなたはとても堅実な方なのだと思います。順番通り、一つ一つ丁寧に対応していくタイプなのかもしれません。
あなたの考えが完全に間違いというわけではないのですが、お父さんの言うように、そろそろ進路のことを本格的に考え始めてもいいのかもしれません。
どうしてかと言うと、やりたいこと、なりたい職業などが具体的に見えてくると、その夢の実現のためにも、今の勉強をもっとしっかりしなくてはと、いつの間にか日々の授業にも身の入り方が違ってきます。
つまり、単に目の前の勉強についていく、卒業しなくては、という受け身の姿勢から、それらがもっと大きな進路目標のための「手段」になるからです。モチベーション、インセンティブも違ってきます。
高2の秋の今ごろから「なりたい自分」「こんな仕事が好き、嫌い」といったイメージをはっきりさせるといいですね。
家族や友達と話し合うと、自己分析でき、自己理解が深まります。向いている仕事なども少し見えてきます。
先生に相談してみると、進むべき専門学校や大学なども具体的に絞られてきます。そういう卒業後の目標が持てると、勉強にも弾みが出てきて、生活にも張りが出てくるように思います。
一度、思い切って自分と向き合い、進路を考えてみてはいかがでしょうか。
教育評論家 尾木 直樹さん
法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。
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