2010年9月26日(日)「しんぶん赤旗」

主張

法人税減税

財界奉仕の議論に根拠はない


 発足したばかりの菅改造内閣の閣僚から法人税率引き下げを求める発言が相次いでいます。

 大畠章宏経済産業相は19日のNHK番組で「雇用の維持や中小企業、輸出産業を日本国内にとどめるため(法人税率の)5%程度の引き下げを決断する時期に入っている」とのべました。野田佳彦財務相も記者会見で「法人実効税率の見直し」を強調しています。

実際の負担率は低い

 法人税を減税すれば雇用や中小企業にも恩恵があり、輸出産業を国内にとどめることができるという議論には根拠がありません。

 経産省や財界は、日本の「法人実効税率」40%は飛びぬけて高いと言っています。しかし、40%はアメリカと同等の水準で、カリフォルニア州などでは日本より高い税率です。財界が注目する世界企業番付では、そのアメリカの企業が上位2000社のうち500社以上を占めています。

 「法人実効税率」は国の法人税率30%と地方の法人所得課税を併せた表面的な税率を示しているにすぎません。大企業は研究開発減税や外国税額控除をはじめとする数々の優遇措置を受け、実質的な税負担率は平均で30%程度にとどまっています。

 企業の公的負担は税金だけでなく社会保障の負担もあります。それを合わせて比べた財務省の調査によると、日本の大企業はドイツやフランスの大企業より2、3割低い負担にとどまっています。

 法人税を減税すれば雇用や中小企業にも恩恵があるかのように言うのは、“大企業優遇”の批判をかわす虚構でしかありません。

 大企業は5年連続で過去最高益を更新した2000年代にも、正社員を減らして非正社員に置き換え、正社員の賃金も抑制するリストラを進めました。その結果、過去10年のうち8年間は所定内給与が前年よりも減っています。大企業は空前の大もうけをあげながら雇用の破壊を続ける一方で、株主配当や役員報酬を増やすとともに巨額のため込み金を積み上げてきました。減税で大企業の利益を増やしてやっても、雇用に回る見込みはまったくありません。

 中小企業は内需低迷や大企業の下請け単価の買いたたきで7割が赤字決算を余儀なくされ、法人税を払えない状態です。しかも、中小企業は一定の所得までは軽減税率(18%)が適用されるため、法人税の基本税率(30%)引き下げで恩恵を受けるのは専ら大企業になります。

大企業本位を改めて

 経産省などの調査によると、企業が投資先を決める最大の要因は現地の市場としての魅力にほかなりません。だから、東京都の調査でも、8割の企業が法人税を10%減税しても日本に「回帰しない」と答えています。問題は法人税率ではなく、長年にわたって家計と内需を冷え込ませてきた日本経済のあり方そのものにあります。

 雇用と中小企業にしわ寄せし、ため込み金と利益を拡大してきた大企業の身勝手な行動が暮らしと経済を壊し、日本を「成長の止まった国」にしています。

 再び財界・大企業の身勝手な要求に従って法人税を減税し、その財源として消費税を増税する道は日本経済の未来を閉ざす道です。

 大企業本位から暮らしと中小企業優先へ、日本経済のかじを大きく切るときです。





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