2010年9月25日(土)「しんぶん赤旗」
尖閣沖衝突
中国人船長を釈放
那覇 地検 「今後の日中関係を考慮」
日本が領有する沖縄県・尖閣諸島の沖合で海上保安庁巡視船と中国の漁船が衝突した事件で、那覇地検は24日、逮捕した中国人船長=・其雄容疑者(41)を処分保留で釈放することを決定しました。同事件をめぐっては、日本側が漁船を拿捕(だほ)し船長を逮捕・勾留したことから中国政府が強く反発していました。
那覇地検の鈴木亨次席検事は24日の記者会見で、釈放の理由について、(1)衝突した巡視船の被害が深刻でない(2)事件に計画性が認められない(3)被疑者は日本での前科等がない―と説明。加えて「わが国の国民への影響、今後の日中関係を考慮すると、これ以上容疑者の身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でないと判断した」と述べました。検察が政治的理由をあげたのは極めて異例です。
仙谷由人官房長官は同日、「検察が総合的な判断の下に考えることもあり得ると思う」との考えを示しました。
船長は手続きが済み次第釈放され、本国へ送還されます。那覇地検は一方、「故意に衝突させたことは明白」として、同船長の処分について後日決定します。
事件は今月7日、尖閣諸島・久場島沖で、海上保安庁の巡視船「みずき」と中国のトロール船が衝突し、漁船の・船長が立ち入り調査を妨害するため故意に漁船を巡視船に衝突させたとして公務執行妨害の疑いで逮捕されたものです。
事件発生後、日本政府は、「日本領海での出来事であり、法に基づいて粛々と対応する」との姿勢を堅持。対して中国政府は、閣僚級以上の交流停止、日本からの上海万博訪問団の招待延期―などの措置で対抗し、対立が経済分野まで飛び火する事態にまで及びました。
尖閣諸島 沖縄県石垣市に属する魚釣島、久場島、大正島などからなる無人島群。1895年1月に日本領に編入、日本が実効支配してきました。中国が領有権を主張しはじめたのは1971年から。国際法上、無主の地については、最初に占有した「先占」にもとづく取得および実効支配が認められています。歴史的経過や国際法からみて、日本の領土・領海です。