2010年9月24日(金)「しんぶん赤旗」
主張
ミレニアム開発目標
貧困克服に一段と努力を
貧困の削減をめざす国連「ミレニアム開発目標」の取り組みを検討する首脳会議が、成果文書を採択して終了しました。世界的不況が影を落とす中で、各国が目標達成に向けた協力の強化を確認したことは大きな意義があります。
新たな資金調達の道として、金融取引などに課税する「国際連帯税」の導入が、検討課題として提起されたことは重要です。5年後に迫った目標期限までに、各国の協力で導入実現に向けた突破口を開きたいものです。
途上国に危機感
「ミレニアム開発目標」は2000年の国連首脳会議で採択されました。極度の貧困と飢餓の克服、初等教育の完全普及、ジェンダーの平等、乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康改善、エイズやマラリアなどの疾病の防止、環境、開発パートナーシップの8目標を15年までに達成するものです。
1日1ドル(現在は1・25ドル)未満で生活する極貧の人々の比率を1990年比で半減させるとの目標について、国連の報告は前進が鈍化しているとしながらも、「達成可能」としています。
しかし、途上国は貧困克服の展望に危機感を抱いており、報告は楽観的過ぎるとの危ぐも表明されています。貧困の改善は地域差が大きく、前進がほとんど見られない地域もあるのが実情です。
成果はおもに、中国やインドなどでめざましい経済成長が続いたことによるものです。半面、アフリカのサハラ以南地域での極貧率は90年の58%から05年に51%と、わずかな改善にとどまっています。地球温暖化を背景に砂漠化が進行し、多くの住民が居住地を追われています。貧困の削減には大きな努力が不可欠です。
8目標のなかには目立った改善の見られないものもあります。初等教育や妊産婦の健康などは目標達成が危ぶまれています。さらに途上国は、公正な貿易・金融制度や債務問題の解決をうたった「パートナーシップ」の遅れを強く懸念しています。
世界は2年前のリーマン・ショック以来の深い経済・金融危機から脱せないでいます。資金を拠出する側の先進国も、膨大な財政赤字を抱え、競うように緊縮政策を進めています。こうした困難にもかかわらず、首脳会議は、先進国が政府開発援助(ODA)を15年までに国民総生産(GNP)の0・7%に引き上げるとした約束を改めて確認しました。
菅直人首相は首脳会議で保健・教育分野への支援を表明しました。日本のODAは、ミレニアム開発目標の合意に反するように、00年以来毎年削減され、09年には対GNP比0・18%に落ち込んでいます。国際責任として日本もODA引き上げが必要です。
新たな資金調達
それでもODAだけでは貧困克服には不十分で、新たな資金調達の道を開く必要があります。首脳会議でフランスやスペインは「国際連帯税」導入を訴えました。欧州連合(EU)も前向きです。
前原誠司外相も首脳会議と並行して開かれた会議で「通貨取引開発税」導入について「議論を深める」と述べました。こうした課税には投機を防ぐ役割もあります。投機が異常な円高をもたらしているいま、この点でも課税実現に踏み出すべきです。