2010年9月21日(火)「しんぶん赤旗」
主張
米軍艦の民間港寄港
自治体権限の侵害許されない
米海軍佐世保基地所属の掃海艦「ディフェンダー」が21日から4日間、沖縄県宮古島市の平良(ひらら)港に寄港する予定です。同港への米軍艦の寄港は1972年の沖縄の本土復帰後初めてです。
離島である宮古島の市民にとって港や空港は生活を支える不可欠なライフラインです。平良港の管理者である宮古島市長をはじめ沖縄県が寄港の自粛を強く求めているのは当然です。港湾管理者の自粛要請を無視して米軍が寄港を強行することは許されません。
法令順守義務がある
沖縄でこれまで民間港に米軍艦が寄港したのは、与那国町祖納港(2007年)と石垣港(09年)だけでした。平良港寄港でまた寄港地が増えることになります。
全国的には、主な民間港に米軍艦が寄港するのがほぼ常態化しています。とくに05年の「米軍再編」報告書で、「平時」から「空港及び港湾を含む日本の施設」を「緊急時に使用」すると日米が合意して以来、寄港の回数・寄港地が増えています。05年が17回だったものが08年は24回、09年は22回となっています。米軍機の民間空港利用も続いています。
米軍艦が民間港への寄港を増やしているのは、アメリカが戦争するさい、米軍基地だけでなく民間港・空港をも足場にするためです。そのため米軍艦は寄港した時には必ず、湾の深さや港湾施設の整備状況、周辺の生活環境などを調査し、データを更新しています。文字通り、アメリカの戦争に備えるためです。もともと戦争を放棄した憲法を持つ日本で、許されることではありません。
見過ごせないのは日本政府が日米地位協定5条を持ち出して、米軍艦の寄港を正当化していることです。5条は「入港料を課されないで日本国の港に出入りすることができる」としているだけです。港湾管理者の権限を無視して寄港できるとは書いていません。地位協定をもちだしても、港湾管理者の許可を受けなければ寄港できないとする港湾法と自治体条例の壁を乗り越えることはできないのは明白です。
政府も米軍が港湾施設を使用する場合には「港湾管理者の許可を受ける」(74年11月7日参院運輸委員会、竹内良夫運輸省港湾局長)と答弁してきました。アメリカの戦争を支援するための「周辺事態法」の政府の「解説」(2000年)でも、「周辺事態においても、通常と同様、地方自治体の長(港湾管理者)の許可を得る必要がある」とのべています。ましてやいまは「平時」です。米軍が港湾管理者の許可も得ないで寄港するなど許されるはずはありません。
寄港の強行をやめよ
地位協定は米軍に日本の法令順守を義務付けています(16条)。港湾管理者の許可も得ない米軍艦の民間港寄港は地位協定にも違反します。米軍の横暴を批判せず、正当化する政府の態度は重大です。
港湾法が自治体首長を港湾管理者にしているのは住民生活を守るために必要だからです。民間港の管理者である自治体首長の多くが米軍艦の寄港に難色を示すのは、平穏な市民生活を脅かし、物流や地域経済に否定的な影響が及ばないようにするためです。管理者の権限を無視することは許されません。日米両政府は米軍艦の寄港強行をやめるべきです。
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