2010年9月18日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 時は、1950年前後。ところは、アメリカ北部ミシガン州の町ジャクソン。あるジャズ楽団の面々が、連れ立ってレストランに入りました▼ところが、いっこうに注文を取りにきません。楽団員が「どうしたんだい?」と聞くと、思いがけない答えが返ってきました。「私どもの店は、白人と黒人のまじったグループには接待しないしきたりでして」▼ミシガンは、全米でもっとも早く「人種差別をなくすべきだ」と名乗り出た州でした。この店のような差別には、5千ドルの罰金がかけられました。かりに50年当時の1ドル=360円で計算すれば、180万円。店の主はいいました。「君たちに料理を出すぐらいなら5千ドル払う方がいい」▼楽団の黒人ピアノ奏者だったハンク・ジョーンズが振り返る、「絶対に忘れられない出来事」です。差別の時代を生き抜き、「ジャズ音楽の生き字引」とたたえられる巨匠、ハンク・ジョーンズ。さる5月、91歳で亡くなりました▼CD店に、最後の録音を記録した盤が並びます。死の3カ月ほど前の演奏です。玉を転がすように滑らかな美音。かと思えば、ここぞという時の力強い一打。変幻自在です。そして、どこまでもみずみずしい。しみじみと恋心をうたう91歳です▼90歳を超えてなお、“もういいや”とは無縁でした。「もっとピアノがうまくなりたい。120歳まで生きるつもりだから、上達する時間はある」と。残された録音をきくたびに、心の中でつぶやくでしょう。ありがとう、ハンクさん。





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