2010年9月16日(木)「しんぶん赤旗」
「国 加害の自覚欠く」
北海道B型肝炎訴訟 原告ら批判
和解協議
すべての国民を対象に実施された集団予防接種の注射器使い回しでB型肝炎ウイルスに感染した患者らが、国に損害賠償を求めている北海道B型肝炎訴訟(石橋俊一裁判長)の口頭弁論と第4回和解協議が15日、札幌地裁で行われました。
前回の和解協議で国は、困難な母子手帳などでの接種の証明を求めたほか、持続性感染者(無症候性キャリアー)については、民法の請求期間(除斥期間)を過ぎているなどの理由で、救済の対象外としていました。
今回の和解協議で原告団は「意見書」を提出し、国は加害者の自覚を欠いていると指摘。それに対し国側は、無作為に調査した母子手帳の有無の結果を報告するなど接種の証明に固執、全面解決には後ろ向きの姿勢です。
裁判長は国に早期解決をうながしました。 口頭弁論では、2人の原告が意見陳述を行いました。
中学2年のときに献血でB型肝炎に感染したことを知ったキャリアーの原告女性(40代)は、祖母を介護した経験から看護学校に進学したものの、「患者に迷惑がかかるのではないか」と退学。誤解による周囲からの差別的な対応や結婚を断念せざるを得なかった人生を振り返り、「いつ慢性肝炎が発症するかと生涯おびえなければならない」「せめてこの苦しみが国の責任であることを認めてほしい」と訴えました。
妻と4歳、8歳の子どもを持ち、肝硬変が発症した原告男性(45)は、入退院を繰り返し、生死をさまよった体験を証言。「子どもが小さく、なんとしても生きないといけない」と語り、国の責任を強調しました。
佐藤哲之弁護団長は記者会見で、「全体解決に何年もかかることは許されない。命の値だんに差をつけたり、一人たりとも切り捨てることはあってはならない」と強調しました。
傍聴した九州B型肝炎訴訟原告団の男性(63)は、「全国の原告団は家族です。国は早期解決にむけて動いてほしい」と力を込めました。
次回の和解協議は、10月12日です。
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