2010年9月15日(水)「しんぶん赤旗」
主張
民主党代表決定
閉塞打開の展望示せなかった
民主党代表選の結果、現代表の菅直人氏が小沢一郎前幹事長を大差で破り、再選を決めました。
3カ月前に鳩山由紀夫前代表と小沢氏が「政治とカネ」問題などで辞任し、後継の菅氏も参院選できびしい審判を受けたなかでの代表選です。ちょうど1年前、自民党政権から交代した民主党政権が国民の批判をどう受け止め、閉塞(へいそく)状況をどう打開するかが問われました。代表選ではそうした太い線での議論は見られず、民主党政権では財界・アメリカいいなりの政治から抜け出せないことを、浮き彫りにする結果となりました。
立て直しの具体策なく
代表選では、小沢氏が「国民生活が第一」の路線に戻すことを主張し、菅氏が「政治とカネ」の問題を意識して「クリーンでオープンな民主党」を強調するなど、国民の批判に応えるそぶりも見せました。しかし、具体的な政策になると、菅氏は「一にも、二にも、三にも雇用」というだけで具体的に国民の暮らしをどう立て直すかは示さず、小沢氏も財源問題で「無駄を削る」というだけで案が示せないなど、行き詰まりを打開する対策はありませんでした。
小沢氏が財源対策として明らかにした地方への交付金を「一括」にすることで大幅に削減できるという提案が、福祉や教育を切り捨てることになると批判をあびたのはその典型です。代表選で消費税のあり方を大いに議論していくと主張した菅氏には、参院選で消費税増税に「ノー」の審判が下ったことへの反省は見られません。
外交でも、菅氏が米軍普天間基地の問題で沖縄県内「移設」を約束した日米合意の実行を目指しているのに対し、小沢氏は改めて話し合うと主張しました。しかし、「日米合意を白紙に戻すつもりはない」とも言い訳し、県内「移設」に反対する県民・市民の願いに応え、打開を目指す立場ではないことも浮き彫りにしました。
結局のところ、経済や暮らしの問題でも外交の問題でも国民の批判に向き合わず、これまでの政治の行き詰まりを打開する展望を示さない中で、代表選が終盤にかけ、大きな比重を占める国会議員の支持を争い、多数の党員・サポーターを抱える支持団体の獲得で覇を競う、権力闘争の様相を強めることになったのは明らかです。
首相でもある菅氏が、代表選も大詰めを迎えた9日、財界3団体のトップも参加する「新成長戦略実現会議」を開催し、わざわざ法人税率の引き下げの検討を「総理指示」の形で明らかにしたのは、代表選での財界の支持をあてにした露骨な“利益誘導”と受け取られ、禍根を残すといわれても仕方がないものです。
国民の監視と批判強め
小沢氏を破った菅氏は、月末にかけ臨時国会を開き、経済対策などに取り組む構えです。しかし、大企業向けの減税や普天間基地の県内「移設」に象徴されるように、財界・大企業とアメリカに忠誠を誓う路線を続けるのでは、行き詰まりを打開することはできません。国民に犠牲をしわ寄せし、矛盾を深めることは明らかです。
政治の閉塞状況を打開するには、財界とアメリカいいなりの政治の異常を正す以外にありません。菅政権への国民の監視と批判を強め、行き詰まった政治の根本的な転換を求めていくことがいよいよ不可欠です。