2010年9月12日(日)「しんぶん赤旗」

トルコ きょう改憲国民投票

憲法裁の政治介入・軍の権限を制限

民主化へ どう審判


写真

(写真)憲法改定国民投票で支持を表す「EVET(イエス)」を呼びかける与党の看板=10日、イスタンブール(松本眞志撮影)

 【イスタンブール=松本眞志】トルコで12日、司法や軍の政治介入を抑え、国会や大統領の権限を強める憲法改定案について国民投票が行われます。改定は、民主主義の強化を求める世論にこたえ、欧州連合(EU)加盟の条件を満たすことを目指して、エルドアン政権が提案。有権者の審判が注目されます。

 最大の焦点は、憲法裁判所による政治介入や国民生活に対する軍による規制の制限などを扱った項目。現行憲法は1980年のクーデター後、82年に軍が定めたもので、軍や司法当局に大幅な権限を与え、国民の民主的権利を制限しているといいます。

 与党側は、憲法裁判所による政党の解党処分手続きの厳格化や一般法廷による軍人の裁判を可能にすることなどを通じて、民主化を進めるとしています。

 イェディテペ大学のアカルテュク憲法学教授は地元紙で、「憲法改定によって一般法廷の権限が強化され、軍人も例外なく裁かれることになる。一方、免責特権は首相や大統領、国会議員に適用される」と語りました。

 これに対し野党側は、国是の「世俗国家」を形骸(けいがい)化させ、「イスラム国家」への転換をはかるものだとして反対しています。

 世論調査(8月30日〜9月5日)によると、53・8%が改憲案を支持、46・2%が反対と答えています。7月下旬から8月初旬の調査では、与党・公正発展党(AKP)支持者のうち96・6%が改憲に賛成、党としては反対を表明しているクルド系の平和民主党(BDP)では支持者の84%が賛成と述べました。

 一方、改憲反対の民族主義者行動党(MHP)支持者の85%、共和人民党(CHP)支持者の9割以上は反対と回答しました。

 地元のメトロポール戦略社会調査研究所によると、5月以降に改憲賛成が増大。地元紙はその要因の一つに、エルドアン首相が03年のクーデター未遂事件に関与したとされる軍高官の昇進を拒否するなど、政府が軍に対して厳しい姿勢を取っていることをあげました。

 憲法改定の動きは、2002年の公正発展党のエルドアン政権発足を機に始まりました。

 07年に同政権は改憲案を起草したものの、野党の反対で廃案。08年には検察が公正発展党の解党を求めて提訴しましたが憲法裁はその訴えを退けました。同党は今年3月、司法改革を中心とする改定案を国会に提出しましたが、国会審議が紛糾し、国民投票を行うことになりました。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp