2010年9月12日(日)「しんぶん赤旗」
主張
政府経済対策
財界・大企業中心の対策では
政府が新たな経済対策を決めました。雇用や投資など5分野に、まず9千億円を投入します。来年度の税制改定で、大企業の競争力強化などのために法人税率引き下げを検討すると明記しました。
さらに円高対応として「政府は必要な時には為替介入を含め断固たる措置を取る」とのべています。日銀には「さらなる必要な政策対応を期待する」として、いっそうの金融緩和を求めました。
雇用が大事と言うなら
経済対策について菅直人首相は「一にも雇用、二にも雇用、三にも雇用」と雇用対策を強調しています。経済対策では既卒者の新卒枠での採用促進など、就職活動に苦労している若者の切実な要求が反映した施策もあります。しかし雇用が重要と言うなら、「使い捨て」雇用をなくして人間らしい雇用に変えていくという切実な課題から目をそらすことはできないはずです。その最大の焦点となっている労働者派遣法の改正に経済対策は何も触れていません。
政府の派遣法改定案は「製造業派遣、登録型派遣の原則禁止」を言いながら、財界の圧力に押されて抜け穴だらけのザル法になっています。「常用型派遣」「専門業務」と名付ければ原則禁止の例外にするという抜け穴をふさいで、名実ともに抜本的な改正を一刻も早く実現すべきです。
法人税減税も財界の強い要求です。菅首相は9日に開いた「新成長戦略実現会議」への「総理指示」でも法人税率引き下げを掲げています。首相が策定を指示した「日本国内投資促進プログラム」の骨子案には、「まずは平成23年度において法人税率を5%引き下げる」とまで書いてあります。
国民の暮らしが脅かされているときに大企業減税に熱を入れる政権の姿は異常です。大企業は2009年度も「現金・預金」を積み上げ、ため込み金を250兆円規模に膨らませています。歴史的な金余り状態にある大企業への減税はムダ金そのものです。
野間幹晴一橋大学准教授によると、日本は赤字企業でも配当するなど欧米・アジア7カ国の企業と比べて株主配当している企業割合が突出して高くなっています。しかも企業の競争力強化に不可欠の設備・研究開発投資を減らした企業の割合も最高です(8月5日付「日経」)。野間准教授は「日本企業が国際競争力を回復するためには、長期的な視野に立ちリスクをとった投資を行う経営者が必要である」とのべ、「経営者の意識改革が喫緊の課題」だと指摘しています。「競争力」の面から見ても大企業に必要なのはお金ではありません。
大企業には、円高を口実にした労働者と中小企業への犠牲の押し付けをやめるよう、行政の強い指導が求められます。財界・大企業中心の姿勢を続ける限り、日本経済を立て直すことはできません。
暮らしに軸足を置いて
今回の円高には巨額の投機資金が深くかかわっています。日銀が金融緩和でじゃぶじゃぶに資金を供給しても、実体経済に回らずに投機資金を膨らませる副作用を大きくしています。
政府は通貨安定に向けた国際的な投機規制の先頭に立つとともに、内需主導の安定した経済成長を実現するため、暮らしに軸足を置いた経済政策に抜本転換すべきです。