2010年9月11日(土)「しんぶん赤旗」

解説

準天頂衛星

巨費投入 軍事利用の懸念も


 準天頂衛星「みちびき」は、利便性向上が期待される一方で、巨額の税金投入や軍事利用の懸念など、負の側面もあります。

 計画はもともと、2001年の経団連による要求でスタート。当初、測位だけでなく通信・放送機能をもつ衛星で、政府と産業界が資金をほぼ半分ずつ負担する予定でした。

 ところが通信・放送分野で地上系設備が発展し、もうけが見込めなくなったことで、06年に産業界が撤退。計画を測位機能のみの衛星に変更し、政府の負担で続けてきました。

 今年度までに735億円の税金がつぎ込まれ、本来の目的の3機体制にするための総事業費は1450億円と試算されています。

 仮に、静止衛星と組み合わせた7〜8機体制にすれば、日本周辺では米国のGPSなしで測位可能な“日本版GPS”が実現しますが、さらに巨額となります。

 巨費を投じて現行GPSを補完・補強する意味があるのか、費用対効果の面からも疑問符がついています。2機目以降の開発の是非について政府は、8府省庁の政務官級の検討チームを設置。来年度に結論を出します。

 アジア地域における兵器の高性能化につながる問題もあります。

 自衛隊は現在、高精度の位置情報を必要とする誘導弾のほか、航法・飛行制御などにGPSを活用。防衛省は衛星測位について、目標への命中精度の向上、戦場認識・戦場管理に活用できると分析しています。

 今後の開発の検討チームには防衛省も参加しており、軍事的要請から計画が進むことも懸念されます。

 税金の無駄遣いや、兵器の高性能化のための手段につながらないよう、国民的な議論・監視が必要です。(中村秀生)





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