2010年9月10日(金)「しんぶん赤旗」
主張
同時テロ9年
いまこそ暴力の連鎖を断て
ニューヨークの超高層ビルに旅客機が突っ込んだ9年前の光景は、いまも脳裏に焼きついて戦りつを覚えさせます。当時、国際社会は野蛮な同時テロを非難しました。それをよりどころに、テロ勢力を世界から追いつめる国際世論を築くことが求められました。
日本共産党はこの卑劣な犯罪を強く非難しました。同時に、軍事力による報復に反対し、国連が中心となって「法と理性」にもとづいて解決をはかるよう求め、不破哲三議長(当時)と志位和夫委員長連名の書簡を世界各国の政府首脳に送りました。
米の戦争がテロを拡散
軍事を優先するブッシュ米政権はアフガニスタンやイラクを舞台に「地球規模での対テロ戦争」に突き進みました。イスラム世界をはじめ世界に反戦、反米感情が広がりました。戦争はテロに反対する国際世論の団結も崩し、テロ問題の解決どころか、逆にテロの拡大・拡散につながっています。
アフガンでの報復戦争はタリバン政権こそ倒したものの、ほどなく泥沼に陥りました。引き継いだオバマ政権は「対テロ戦争」を掲げるのをやめ、標的を同時テロを引き起こしたテロ組織アルカイダとその関係団体に特定しました。アフガンには米軍を3倍近い10万人規模に増派しました。しかし、事態は米政権の見通しを裏切って悪化の一途をたどっています。
英国際戦略研究所が7日発表した報告は、「(武装勢力)タリバンの打倒がアルカイダの打倒と事実上同義とみなされている」「大量の外国軍の駐留こそタリバン戦士を力づけている」と、「オバマの戦争」を批判しました。
米軍をはじめ外国兵の死者は今年すでに500人を超え、過去最悪だった昨年水準に早くも迫っています。NATO(北大西洋条約機構)は15万人の外国軍を展開しながら、さらに2000人の追加派遣を要請しています。
米軍はタリバンの攻勢を抑えようと、いったん武装解除した軍閥の再武装にまで乗り出し、アフガン国民は武力抗争の高まりに懸念を強めています。
暴力の限りない連鎖で、アフガンは疲弊しきっています。政治的和平を追求する以外に道はありません。外国軍は撤退すべきです。
オバマ政権は、アルカイダ掃討に効果的だとして、無人機による攻撃などの特殊作戦に力を入れています。それは、戦争だからといって法の外での暗殺が許されるか、という問題を生んでいます。
米国民が犯すテロにどう対処するかも問題です。9・11以後も米国内でテロや未遂事件が散発的に起き、国際的な背景も指摘されています。インドのムンバイで2年近く前に起きたテロにも、米国人の関与が報じられています。
米国民に、米政府は「戦争」を仕掛けるか? 一見突拍子もない話ですが、同じテロ容疑者を、国内では「犯罪」として司法追及するのに、国外では「戦争」として攻撃するのは、軍事優先がもたらす混迷を示しています。
戦争でテロはなくせない
戦争ではテロをなくせないという基本にいまこそ立ち返ることが必要です。軍事力による暴力の連鎖は、テロ根絶に向けた国際社会の協力も阻んでいます。テロには軍事力でなく、政治と警察活動で対処すべきです。