2010年9月10日(金)「しんぶん赤旗」

貧困ビジネス 元入居者が提訴

“人間扱いされなかった”

愛知・岡崎


 愛知県岡崎市で「無料低額宿泊所」の元入居者3人が今年2月、不当に高額な代金を徴収されたとして、業者に損害賠償を求める裁判を起こしました。その実情を現場で探りました。(今田真人)


生保受給日は業者同行で市役所に

徹底した監視 まるで軍隊か収容所

 「私たちは人として扱われていなかった」。60歳の原告男性は、労働者派遣会社の杉浦工業(本社・岡崎市)が運営していた「無料低額宿泊所」(「第2協栄荘」)での生活を振り返ります。

 男性が「一番いやだった」体験は、毎月の生活保護費の受給の際、「業者が市役所への送迎を行い、両側を業者の人間にサンドイッチのように挟まれるなど、業者の徹底した監視下に置かれたこと」です。宿泊所に帰ると、食堂に集められ、月約11万円の保護費から、居室料や食費などの名目で、その8割超を徴収されました。手元には2万円弱しか残りませんでした。

 外出時は休憩室のノートに行き先の記入を義務付けられ、宿泊所での飲酒も禁止。「まるで軍隊か収容所のようだった」と言います。

 宿泊所の生活は劣悪。10人前後の入所者に狭い風呂が一つだけ。食事は1日2回。朝食は生卵とインスタントみそ汁、ご飯。夕食も生卵が業者のおかずだけの弁当にかわる程度。しかもコメはたびたび、不足しました。46歳の原告男性は「コメは、くず米やえさ米。ほとんどが割れてコメの形をしていなかった」と怒ります。

 60歳の原告男性は、県内のトヨタ関連会社の正社員でしたが、古い交通事故の後遺症が出て足が動かなくなり、失業しました。約2年間、ホームレスを経験。昨年3月、岡崎市内で行われた市民らによる「反貧困相談会」に相談し、生活保護を受けるようになりました。

 しかし、生活保護を受けると同時に、市の福祉事務所(生活福祉課)の「紹介」で「宿泊所」に入所。

 原告男性らは支援者らの手助けでアパートを探し出し、福祉事務所と交渉。ところが、ケースワーカーからは「宿泊所を出るなら保護を打ち切る」と言われました。60歳の男性は「市役所は業者とつるんでいる」と告発します。

 原告の男性らは、支援者や弁護士らの援助もあって、やっと約6カ月後にアパートに移ることができました。

 この訴訟について、杉浦工業の担当者は「うちの宿泊所は市の指定を受け、その代金の金額もすべて市と相談し、了解してもらっていた。金額は全国平均レベルであり高くない」などとしています。

 一方、市の福祉事務所の担当者は「(杉浦工業などを)市が紹介したことは認める。一部の無料低額宿泊所(杉浦工業のこと)は廃止の届けを受けている。無料低額宿泊所は本来、一時宿泊的な意味もあることから、引き続き転居の相談には応じていきたい」と話しています。


市の責任重い

日本共産党市議 鈴木まさ子さん

 「貧困ビジネス」が横行する根本には、きのうまで働いていたような労働者を、景気が悪くなったからといって、すぐ路上にポイと捨てる大企業のひどい姿勢があると思います。愛知県は、トヨタなどの工場が集中しています。昨年、岡崎市内で実施した「反貧困相談会」には、多くの大企業の元派遣労働者らが相談に訪れました。裁判を起こした原告らもこの「相談会」を訪れた元労働者です。

 私は昨年末の市議会で、この問題を取り上げました。大企業の責任はもちろんですが、まともな調査もせずに、無権利な宿泊所に元労働者らを送り込み、業者に生活保護費のピンハネを許した市の責任は大きいと思います。これからも市の責任を厳しく追及し、貧困者の弱みにつけ込むような悪徳業者を一掃したい。





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