2010年9月8日(水)「しんぶん赤旗」

主張

異常な夏

暑さへの抜本策が不可欠


 連日の「猛暑日」や「熱帯夜」が続いたこの夏の暑さは、9月にはいってもいっこうに収まる気配がありません。気象庁は先週、「異常気象分析検討会」を開き、今年の暑さを「異常気象」と認めるとともに、今後も暑さが続くとの見通しを公表しました。

 異常な暑さで、「熱中症」など体調を損なう人が続出し、多数の死者も出ました。農産物などの被害も深刻です。今後も「熱中症」などの対策を続けるとともに、再来も予測して、根本的な対策を考えることが不可欠です。

気象異常に見合った対策

 気象庁はすでに、この夏(6〜8月)の日本の平均気温は、平年よりも1・64度も高く、統計を開始した1898年以降の113年間で最も高い記録となったと発表しています。気象についての専門家が参加する異常気象分析検討会では、異常な暑さは梅雨明け後、上空の偏西風(ジェット気流)が平年より北に偏って流れたことや、ペルー沖の赤道付近の海水温が高くなるエルニーニョ現象終了後の昇温効果などで北半球の気温が高くなったことを指摘しています。気象庁では背景として温室効果ガスの増加による地球温暖化の影響が表れているとも指摘しました。

 異常な暑さは、国民の生命をも脅かします。熱中症などで病院に運ばれ手当てを受ける人が急増し、亡くなった人はすでに500人を超しています。経済的な理由などで冷房を入れることもままならず、人知れず亡くなる人も相次いだという各地からの報道に、心が締め付けられる思いです。

 異常な暑さは農業など、経済活動にも大きな影響を及ぼしています。牛や豚などの家畜が死に、野菜や果物などの価格高騰も家計を直撃しています。収穫期を迎えたコメも、高温障害などで作柄に不安が広がっています。

 事態はまさに、「天災」と呼ぶにふさわしい異常事態です。この夏、全日本民主医療機関連合会や全国生活と健康を守る会連合会は、ひとり暮らしの高齢者などが日中、公的施設などで暑さを避けられるようにすることや、クーラーの設置・修理や電気代への補助などを実現するよう求めて運動を起こしました。今後も暑さが続くことを考えれば、こうした措置は直ちに実施すべきです。被害を受けた農産物などへの補償や、新学期が始まった学校での暑さ対策なども、急いで実現すべき課題です。

 平年を大幅に上回る異常な暑さは、個人の努力だけでは被害を防ぎきれません。国民のいのちと暮らしを守るため対策をつくすのは、国と自治体の責任です。

涼しくなっても油断禁物

 異常な暑さの影響は、これから涼しくなるからといって油断は禁物です。秋になって一気に体調を崩すということは、普通の年でもありがちです。とりわけ熱中症の影響は、体に大きなダメージを残します。注意と対策が重要です。

 同時に、今後もこうした異常な暑さの再来があることを考えれば、暑さ対策の抜本策を検討する必要があります。学校のエアコン設置や公的施設に避難所を準備するなど暑さに強い町づくりを進めるとともに、暑さが強まる時期の仕事や生活も見直す必要はないか。都市のヒートアイランド化や温室効果ガスの排出を抑え、温暖化を防止する対策も不可欠です。





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