2010年9月8日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
きょうは旧暦の8月1日。八朔(はっさく)です。早稲(わせ)が実るころにあたります。昔は、刈ったばかりの稲穂をお世話になった人に贈る風習がありました▼いまも各地に、八朔祭の行事が残ります。かんきつのハッサクも、八朔のころ食べられるのでこの名がつきました。ただ、最近の早場米の刈り取り時期は早い。先月末に訪ねた西日本の産地では、すでに刈り終えた田んぼが目立ちました▼炎天下、黙々とコンバインを運転する人たち。しかし、実りの秋を素直に喜べない農家が多い。米の取引価格が暴落しています。8月の2009年産米の取引価格は、1俵あたりで昨年秋の収穫期より1000円近く下がりました▼新米が市場に出回れば、いっそう米が余り、米価の下落に拍車をかけかねません。米価が低いままだと、時給300円に満たない稲作農家の営業はたちゆかず、わが国米づくりの土台が揺らぐでしょう▼もちろん、世の中“米余り”とはいいにくい。生活保護を受けられず、飢え死にする人。派遣村に駆け込む失業者。家が貧しくて、腹いっぱい食べられない子どもたち。海外に目を向ければ、米の国際価格は一時より下がっていますが、高止まり。生産量はふえているものの、貧困層に十分に届きません。生産も、異常気象や災害で先行き不安です▼米をつくるほどに農家は苦しみ、日本では米が余り、世界の生産もふえているのに飢えと食料不安が続く。人の命のおおもと、食と農がいつまでもちぐはぐなままでいいはずがありません。