2010年9月8日(水)「しんぶん赤旗」
九州最後のツキノワグマ 本州の由来だった
記録は30年さかのぼる
DNA分析
1987年に大分県で捕獲されたツキノワグマは本州から持ち込まれたか、その子孫と考えられる―。森林総合研究所のチームがDNAを調べた結果わかったと、同研究所が6日発表しました。
このツキノワグマはこれまで九州最後の個体とされてきましたが、最後の記録は1957年まで30年さかのぼることになります。
「九州最後のツキノワグマ」の体組織の一部が、北九州市立自然史・歴史博物館に保存されています。研究チームは、同博物館から少量の試料を分けてもらい、細胞内器官であるミトコンドリアのDNAの塩基配列を調べ、これまで知られている日本各地のツキノワグマのものと比較しました。
その結果、福井県嶺北地方から岐阜県西部にかけて分布しているタイプと一致していることがわかりました。
日本のツキノワグマは遺伝学的に見ると、大きく、琵琶湖以東の東日本グループと以西の西日本グループ、紀伊半島と四国の南日本グループに分かれます。東日本グループと西日本グループは6万年以上前に分かれたことがわかっています。
東日本グループのツキノワグマが西日本グループの生息する中国地方を飛び越えて九州に存在することは考えられないため、研究チームは今回調査した個体を、福井県と岐阜県周辺から九州に持ち込まれたものと推定しました。
今回調べた個体より前の九州産のツキノワグマが存在した可能性を示す最後の証拠は、1957年に見つかった子どもの死体です。
研究成果は17日から岐阜大学で開かれる野生生物保護学会と日本哺乳(ほにゅう)類学会の合同大会で発表されます。
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