2010年9月7日(火)「しんぶん赤旗」

笑顔で会見 警官が記念撮影…

バス乗っ取り事件 不手際続出

比政権 対応に苦慮


 フィリピンの首都マニラで先月発生したバス乗っ取り事件で、人質8人が死亡するという事態に至ったことをめぐり、アキノ大統領が苦しい立場に追い込まれています。(ハノイ=井上歩)


 政権発足2カ月あまりのアキノ大統領は事件後、対応の不手際を認めて謝罪。デリマ法相をトップとする事件調査・検討委員会を設置し、問題の究明に乗り出しました。しかし、事件直後の記者会見で笑顔を見せたため、ウェブサイト上の大統領の個人ページには中国・香港から非難の書き込みが相次ぐなどしました。

 また、警官がバスの前で記念撮影するなど事件後の不手際も続き、中国や香港の市民の感情を重ねて害しました。香港では抗議デモも起きました。

 事件調査委員会は今月3、4日の両日、聴聞会を開催。内務次官や警察幹部から聞き取りを始めました。現地紙の報道によると、深刻な失策があったことが証言で次々と明らかになっています。

 ▽犯人の弟を交渉に参加させたうえ拘束し、犯人を興奮させた▽犯人要求の復職を認める文書を準備したが、犯人が取材を受け通話中で、伝えられなかった▽より訓練された部隊は突入作戦に参加せず、バスの窓ガラスを壊す器具などの装備が不十分だった―。

 事件の「危機管理委員会」を指揮するマニラ市長と副市長が、最終局面で指令本部を離れ、レストランなどにいたことも明らかになりました。

 これらの失態について、事件直後から警察幹部の処分や辞任が進んでいます。議会ではロブレド内務・自治相の辞任を求める声が出ています。

 政権批判が増すなか、アキノ大統領は3日、自分が最終的な責任者だと表明。治安に問題があると認め、警察改革などにも言及しました。どのような調査結果と改善策を打ち出すかで、手腕が問われることになります。中国も徹底究明を求めています。

 また、アキノ大統領は経済回復に観光や外国投資を期待しますが、事件がとりわけ観光業に影響するのは確実とみられ、この面でも政権運営の厳しさは増しそうです。


バス乗っ取り事件

 事件は8月23日に発生。元警官が自動小銃を持って観光バスを乗っ取り、香港からの観光客ら25人を人質にとり、復職を要求しました。警察は交渉解決に失敗、突入して容疑者を射殺しましたが、人質8人が死亡する惨事となりました。

 警察の特殊部隊は突入に手間取り、制圧までには1時間以上かかりました。その様子はテレビで中継され、事件直後から香港や国内で批判が噴出。中国の香港特別行政区政府は「失望」を表明し、渡航情報の危険度を引き上げてフィリピンへの渡航回避を呼びかけました。





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