2010年9月7日(火)「しんぶん赤旗」

名古屋・市議会解散運動

河村市長に道理なし

「民主主義破壊」と市民批判


 河村たかし名古屋市長が、自分の支援グループを使って議会解散・リコール運動を主導しています。市民から「大義も道理もない運動だ」「議会否定の暴挙を許すな」との批判の声があがっています。(愛知県・広瀬幸男)


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(写真)「議会制民主主義を守りましょう」と訴える、日本共産党の佐野たかふみ(中央)、もとむら伸子(その左)両氏ら=5日、名古屋市南区

 「河村市長のねらいは、地方自治の原則である議会と首長のどちらも住民が選ぶ二元代表制を否定し、市長の独裁政治をつくること。議会制民主主義の破壊だと思う」と語るのは、議会解散・リコールに反対する中村呑海(どんかい)さん=中川区在住=。「マスコミを最大限利用して、世論をあおるやり方には、ファシズムのにおいがプンプンする」と憤ります。

 議会の解散・リコール運動は本来、議会や議員が住民との関係で不当なことをしたり、腐敗事件を起こしたとき、住民の中から起こってくるものです。しかし今回は、河村市長が自分の思い通りにならない市議会を解散させようと支援グループに指示したものです。

 市長支援グループ「ネットワーク河村市長」は8月27日から直接請求署名を開始。1カ月間で有権者の約3分の1にあたる36万6000人超の署名を集めれば住民投票になり、その投票で過半数の同意を得れば市議会は解散します。

 その場合、河村市長は自ら辞職し、市議選・市長選・知事選のトリプル選挙を2月につくりだし、出直し市議選では自分を支持する候補者を大量に立候補させ、「市長言いなり議会」に変質させる構えです。

 これに対し、市議会は、「二元代表制および、議会制民主主義を尊重し、市民生活を第一に考えた市政運営に全力を尽くす決意表明」を決議しています。

 マスメディアも「市長が自分の意向を通すためにリコール制度を使うのは抜け穴のような感じを受ける」(「朝日」8月22日付、増田寛也元総務相談話)、「『二元代表』の一方である首長が、もう一方の議会を施策に反対したとの理由でつぶそうとする異常事態」(「毎日」8月25日付)などと指摘しています。

 憲法学者など著名14氏が発表したアピール「憲法に保障された地方自治を否定し市長の強権政治に道を開く『議会解散・リコール』にこぞって反対しましょう」に共感が広がっています。河村市長の元後援会幹部も「河村氏は市民のことを何も考えていない。応援してきたことを後悔している」とこれに賛同しています。

 日本共産党は河村市長の議会解散運動に反対し、議会否定の暴挙を許さず民主主義を守るため、宣伝・対話に全力をあげています。党市議団は国民健康保険料の引き下げなど福祉・暮らし・雇用、中小業者支援の署名を市民に呼びかけるとともに、議会内でも議員報酬の引き下げやムダな海外視察の中止、企業・団体献金の禁止などの議会改革に奮闘しています。

市民税10%減 低所得者に効果なし

財源は福祉削減

崩れる言い分

 河村市長が議会解散の理由として挙げる、(1)市民税10%減税「継続」(2)地域委員会「継続」(3)市議報酬の「半減」も、まったく道理がありません。

 消費税をなくす愛知の会代表世話人の大島良満さんは、「3点とも議会の軽視につながるもの。だまされてはいけません」と批判します。

 河村市長が昨年4月の市長選で公約したのは「金持ちは減税ゼロ」。ところが今年6月に実施された市民税減税は、所得が多い人ほど減税額が多くなる一律10%減税。1035万円も減税された人がいる一方、市民税非課税世帯を含め全市民の半数以上が恩恵を受けていません。

 減税によって市財政も悪化。市財政局は、来年度も「減税」を「継続」した場合、226億円もの税収減となり、149億円の収支不足が発生するとの見通しを示しています(今月1日市議会財政福祉委員会)。

 河村市長は、「減税すると、全分野でいや応なしに聖域なしで構造改革が始まる」(昨年9月議会)と市民サービス後退の「構造改革」を唱え、実際に病院・保育園の直営廃止・民営化など福祉削減を打ち出しています。7月には国民健康保険料が大幅に値上がりし、市民から悲鳴があがっています。

 学区の地域予算の使い道を市長に提案する「地域委員会」は、現在8地域でモデル実施中です。学区区政協力委員会など既存の地域団体との連携不足や、予算使途の制限など問題点がたくさんでており、実施地域を拡大すれば、いっそう問題は広がります。

 議員報酬については、議会も削減の方向を打ち出しています。日本共産党は民主的な方法で引き下げを提案しました。

 河村市長は、「議員はすべてボランティア化すればいい」と主張。市民から「ボランティア化したら金持ちしか議員になれなくなる」「寄付金を出せる大金持ちが議員を買収し、政治を支配することになる」などの批判があがっています。

 通常なら来年4月になる市議選では埋没するからと強引に解散させ2月選挙にしようとする河村市長。市選挙管理委員会の試算では議会解散が成立するまでの費用は4億5千万円。出直し市議選と合わせると10億5千万円。市長選と同時の場合は12億5千万円の市税が投じられることになります。「多くの代償を払っておこなわれる運動となる」(「中日」8月27日付)との指摘もあります。

「憲法9条 恐ろしい」

河村氏の発言録

 河村市長は「地方自治の二元代表制は立法者の制度ミス」(昨年11月2日の定例記者会見)と主張し、「(交戦権を否認した憲法9条2項は)恐ろしい条文」(今年6月17日本会議)と発言。市内各地の集会でも「憲法9条は変えたほうがええ」と繰り返し主張しています。

 成瀬昇・元愛知県地方労働組合評議会議長は、「憲法を真っ向から否定する、根っからの改憲論者だ」と批判します。


 二元代表制 住民から直接選ばれた首長と議会がチェック・アンド・バランスの関係で、互いに独断や暴走を防ぐ、民主主義を保障する仕組みです。首長と議会の意見が食い違った場合は、両者がよく話し合い、一致点を見出していくのが当然の姿勢です。





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