2010年9月7日(火)「しんぶん赤旗」
主張
中東和平交渉
国際世論の力で困難乗り越え
イスラエル・パレスチナ紛争の解決をめざす両当事者の直接交渉が、オバマ米政権の仲介で始まりました。ワシントンで開かれた初回は、枠組み合意をめざす交渉を1年間をめどに、1カ月に2回行うことなどが確認されました。
交渉は多くの問題や障害を抱えています。当事者ばかりか世界的にも、楽観的な見方はありません。この地域の不正義と暴力、緊張をこれ以上続けるべきではなく、全当事者が和平をめざすべきです。出発点に立った交渉が中東和平への実質的な前進につながることが望まれます。
議論の入り口で障害
紛争の解決には、イスラエルとパレスチナが互いに相手の生存権、自決権を認め合うことです。パレスチナ国家の創設とイスラエルとの2国家共存は、国際的に確認された目標です。その実現には、パレスチナ国家の国境の画定、エルサレムの帰属、イスラエル入植地の撤去、パレスチナ難民の帰還など、山積する問題を解決しなければなりません。
これらは交渉で解決されるべき問題ですが、交渉の前進には原則を尊重することが必要です。
両国家の境界をどう設定すべきかは明らかです。1967年の国連安保理決議242は、イスラエルが同年の第3次中東戦争で占領した地域から撤退するよう要求しています。パレスチナ側もこれに沿って、東エルサレムを首都としヨルダン川西岸とガザ地区からなる国家の創設を求めています。イスラエルは占領地から全面的に撤退すべきです。
しかし、交渉はこの原則にもとづく本格議論の手前で大きな障害に直面しています。イスラエルは国内の右派勢力の突き上げもあって、東エルサレムや西岸への入植を拡大しています。イスラエルが西岸にはりめぐらせた分離壁も入植地を囲んでパレスチナ側に大きく食い込み、2国家共存の展望を脅かしています。
占領地への入植は国際法に反し、戦争犯罪にもあたります。過去の安保理決議も入植停止を求めています。交渉を決裂させないため、国際世論でイスラエルの入植拡大を抑えることが不可欠です。
交渉開始直前、西岸で入植者が殺害され、交渉に反対するパレスチナの武装抵抗組織ハマスが犯行声明を出しました。テロは許されません。同時に、パレスチナ人が被っている不正義を解決する道を実際に示すことが、テロ根絶にもつながります。
直接交渉の開始にはオバマ大統領の強い意向があります。オバマ政権にイランの核開発問題や米中間選挙をにらんだ戦略があるとしても、その努力は歓迎されます。
オバマ大統領は、イスラエルに入植地建設の中止を求めた昨年のカイロ演説当時に比べ、イスラエル寄りの姿勢を強めていると見られています。今回交渉で、イスラエルが入植拡大を再開しても交渉をやめるな、と入植容認ともとれる圧力をパレスチナ側にかけているとの報道もあります。過去の交渉決裂の経験からも、米国は公正な仲介者であるべきです。
世界の安定にも不可欠
この紛争の解決は、当事国と中東地域だけでなく、世界の安定にとっても不可欠です。国際社会が、障害を乗り越え解決に向かう真剣な努力を払う必要があります。