2010年9月5日(日)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 「おお ジプシーの町よ!/街角ごとに立つ幟(のぼり) 。/お前の緑の灯(あか)りを消せ/警官どもがやって来る。」▼スペインの詩人ガルシア・ロルカが詠んだ、「スペイン警察兵のロマンセ」の一部です(小海永二訳)。1920年代の詩です。40人の警察兵が「ジプシー」の部落を襲い、女性や子どもに暴行を加えて去ってゆく…▼15世紀ごろスペインにやってきた「ジプシー」は、各地に居つきました。フラメンコを盛んにしたのも彼らです。ロルカは、「ジプシー」の民話や音楽にひかれ、彼らと親しく交わります。しかし、権力は虐待を続けていました▼かつて「ジプシー」とよばれた人たちの多くはいま、みずからを「ロマ」と名乗るようにしています。祖先の言語ロマニ語で、人間や男を意味する言葉です。フランスで先月来、ロルカの詩を思い出させる出来事が起こっています。警察がロマの住むキャンプ地を次々と解体し、彼らを出身国ルーマニアに送り返す▼サルコジ政権は、犯罪を引き起こす不法居住者としてロマを追い出しています。思い起こすのは、ロルカの詩だけではありません。ヒトラー政権のドイツ。ナチスは、ユダヤ人とともにロマを「劣等人種」とみなし、絶滅を企てました。犠牲者は、50万人とも150万人ともいわれます▼犯罪者なら、個々に捕らえられます。しかし、集団ごとの追放にフランス国内からも「国家による人種差別だ」との批判が出ています。「われわれの国旗に恥という名の染みがついてしまった」と。





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