2010年9月5日(日)「しんぶん赤旗」
主張
軍事費概算要求
ごまかしやめて大幅な削減を
2011年度予算で防衛省は、米軍再編などの経費を含め、総額4兆8201億円で今年度予算より298億円も多い、軍事費の概算要求を提出しました。
軍事費を「聖域」にして、5兆円規模を維持するのは、ムダと浪費を削って暮らしの予算を確保してほしいという国民の願いに反します。社会保障を充実し国民生活を守るのが政府の最大の役割です。財政危機のなか、欧州の主要国でも軍事費を削減する動きを強めています。軍事費を大幅に削減し、国民生活予算に回すことがいよいよ重要です。
海外での作戦能力強化
政府は概算要求にあたって、一律1割削減を各省庁に求めましたが、防衛省は1割削減しても、概算要求とは別建ての「特別枠」で削減分を獲得すれば軍事費を増やせるともくろんでいます。そのために「特別枠」に、「米軍思いやり予算」(1859億円)やミサイル防衛(MD)関連経費、燃料費など4755億円を並べています。いずれも拒絶できないと見越したうえの作戦です。
たとえば米軍が増額を迫っている「米軍思いやり予算」は全額が「特別枠」です。ミサイル防衛関連経費も2166億円が「特別枠」です。政府として削減しにくいものを「特別枠」に並べた防衛省のやり方は、見かけだけ削減し、実際には総額を何が何でも確保しようというものです。
しかも重大なのは概算要求の内容です。海外で戦争できる能力強化がむきだしになっています。
UH60JA多用途ヘリへの防弾板取り付けは、海外の戦場で地上からの攻撃を想定した防御措置です。CH47JA輸送ヘリのエンジンを高出力化するのはアフガニスタンなどの高峻(こうしゅん)な山岳地帯を飛ぶためです。
地上攻撃を避けるための自己防御装置も輸送機に装着されます。C1ジェット輸送機を搭載量・航続距離ともに増大したC2に替えるのは海外での輸送作戦のためです。日本が米軍とともに海外で戦争する能力を強めるのが狙いであるのは明らかです。
沖縄南西部の先島諸島への陸上自衛隊の「部隊配備について検討する」ことを明記したことも見過ごせません。米海兵隊をモデルにした陸上自衛隊の“海兵隊化”といわれます。島嶼(とうしょ)部の事態に備えるというものの、海外への“殴り込み”部隊に発展しない保証はありません。
先島諸島は中国と近接しています。それだけに自衛隊配備が緊張を生むのは必至です。
沖縄県民・住民はこれまでも先島諸島への自衛隊配備に反対してきました。中国との政治的・経済的結びつきが強まっている今日、軍事緊張につながる陸上自衛隊の実戦部隊の配備はやめるべきです。
軍事力至上主義改めよ
政府は5兆円規模の軍事費を正当化するために中国や北朝鮮の「脅威」をもちだします。しかし軍事力でことをかまえ、日本を守ろうという「軍事力至上主義」では、軍拡の悪循環しかもたらしません。
時代遅れの「軍事力至上主義」から抜け出すことが重要です。
そうしてこそ、軍事費にメスを入れ、軍事費を国民生活にまわせという国民の願いにも応えられます。