2010年9月4日(土)「しんぶん赤旗」
現場カーブに不安 50% 懲罰的教育は圧力 82%
運転士アンケート391人回答
事故報告書検証メンバーに
JR西日本 福知山線脱線
JR福知山線脱線事故をめぐり、JR西日本幹部による国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(当時)委員への働きかけや、事故調委員による情報漏えい問題などの検証をおこなう被害者・学識経験者による事故報告書の「検証メンバー会合」が3日、大阪市内で開かれました。昨年12月以来、今回で3回目。
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会合では、同メンバーがことし7月に実施した、事故発生当時、事故現場を含むJR宝塚線で運転していたJR西の運転士アンケート結果(退職者含む515人対象、有効回答数391人)を報告。脱線転覆事故のあった現場のカーブを「制限速度時速70キロを超えて運転した経験がある」と回答した運転士が46人(11・9%)もいたことがわかりました。このうち、38人が制限速度超過を繰り返して運転した経験がありました。
制限速度超過の理由(複数回答)は、ダイヤの遅れの回復やダイヤ維持が52人、ブレーキ操作の遅れが39人、うっかりが24人、睡魔のためが7人でした。
事故発生当時の運転の考え方をめぐって、「現場カーブでスピードを出しすぎると脱線することがありえるか」という問いに、国鉄からJRに分割・民営化されたあとで入社した運転士のほうが、危険性を認識していなかったことがわかりました。
また、事故現場のカーブについて、「何か不安や緊張感を感じたことはあるか」という問いに、188人(49・7%)が「ある」と回答。新型自動列車停止装置(ATS―P)の設置が必要だと思っていた運転士は159人(41・5%)で、すでに設置されていると思っていた運転士も30人(7・8%)いました。
事故当時のダイヤについて、「余裕がない」と感じていた運転士は299人(75・7%)にのぼりました。同事故発生前まで「自分の運転の仕方いかんで脱線するかもしれない」と思っていた運転士も176人(45・4%)にのぼりました。
JR西は「運転士はカーブの制限速度を大幅に超えて運転することはないと考えていた」と説明していましたが、これにたいし「会社の見解はおかしいと思う」と答えた運転士が173人(45・3%)にのぼるなど、会社幹部の説明に疑問を抱いていた実態が明らかになりました。
速度超過の危険性の社内教育を受けたと回答したのは143人(36・7%)でしたが、懲罰的な「日勤教育」をプレッシャーと感じていた運転士は315人(81・8%)にのぼりました。
会合には、運輸安全委員会の後藤昇弘委員長らと、安部誠治・関西大教授(公益事業論)、佐藤健宗弁護士(鉄道安全推進会議事務局長)ら有識者、4・25ネットワークの遺族と「負傷者と家族等の会」の被害者家族の代表らが出席し、来年3月末までにまとめる予定の報告書でとりあげるべき論点などを議論しました。