2010年9月3日(金)「しんぶん赤旗」
所得格差が過去最悪
厚労省調査 90年代後半から急拡大
厚生労働省の調査で、世帯ごとの所得格差が過去最大に広がっていることが分かりました。所得の格差を示す「ジニ係数」などを調べた同省の2008年所得再分配調査(1日発表)の結果です。
最大になったのは税金と社会保障による再分配を行う前の当初所得の格差。07年の所得で推計したものです。
ジニ係数は0から1の数値で表し、所得格差が広がるほど大きくなります。仮に全世帯の所得が同一なら0、1世帯が全所得を独占すると1になります。
同調査は1962年から始まり、今回で15回目。再分配前の当初所得のジニ係数は62年調査で0・3904でしたが、今回0・5318にまで上昇しました。60年代には格差縮小の傾向もみられましたが、84年以降は一貫して格差が広がり、特に90年代後半から急速に拡大しています。
当初所得の年平均額は、今回調査で前回(05年)と比べて約21万円減少しており、高齢・単身世帯の増加、非正規雇用の広がりなどによる世帯所得の低下が格差拡大の背景にあるとみられます。
一方、税金と社会保障による再分配後のジニ係数は今回0・3758で、前回の0・3873から若干縮小しました。再分配による係数改善度は過去最高の29・3%となりました。年金受給者の増加が最大の要因とみられます。
しかし、再分配後の所得の年平均額は、前回調査より約32万円も減っており、当初所得の平均額の減少以上に減っています。定率減税の縮小・廃止や保険料値上げなどの負担増で、働く世帯の多くが再分配所得を減らしたために、低くならされる形になったと考えられます。
2000年代半ばのOECD(経済協力開発機構)調査で比較すると、再分配による1人あたり所得格差の改善幅はドイツ0・21ポイント、スウェーデン0・2ポイント、フランス0・2ポイント、デンマーク0・19ポイントと比べて、日本は0・14ポイントと依然低水準です。
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当初所得と再分配所得 当初所得は、雇用者所得、事業所得、農耕所得、畜産所得、財産所得、家内労働所得および雑収入、私的給付(仕送り、企業年金、生命保険)などの合計額。公的年金は含まれません。再分配所得は当初所得から税金、社会保険料を引き、年金・医療などの社会保障給付を加えたもの。
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