2010年9月3日(金)「しんぶん赤旗」
主張
「暴力団排除宣言」
大相撲の再生はこれからだ
今月12日から始まる大相撲の秋場所(東京・両国国技館)を前にして、日本相撲協会は反社会的勢力との関係断絶を誓う「暴力団等排除宣言」を発表し、内外にその決意を示しました。野球賭博への関与など、度重なる不祥事が問題になってきた、大相撲の再生に向けた一歩です。
悪習と縁を切って
7項目からなる「宣言」の中身は、暴力団関係者とのあらゆる取引や交際を禁じるとともに、野球賭博などの違法行為に手を染めないことを明記しています。また、違反者には解雇をふくむ「厳正な措置」をとるとして、厳しい姿勢でのぞむことを強調しました。
日本相撲協会の放駒理事長(元大関魁傑)は「過去の悪習と縁を切り、一日も早く信頼を回復し、相撲界が生まれ変わって伝統と文化のうえに明るい未来を築けるよう全力を挙げる」と、「宣言」を読み上げました。今後は各親方や力士をはじめ、全協会員に「宣言」を徹底して、一人ひとりが身を正していくことが求められます。
具体的な手だても必要です。闇の勢力は巧妙な手口を使って近づいてきます。新たに設けた暴力団対策委員会は1日の初会合で協会員のために相談窓口をつくることや、研修会の実施、マニュアルの作成を決めました。罰則だけでなく、組織全体で守っていく意識が大切でしょう。
つけ入るスキをみせないためには、以前から興行権をめぐって暴力団との関係が指摘されてきた地方巡業や、億単位の金が動くとされる年寄株の改革にも本格的に乗り出さなければならないでしょう。これまで手をこまぬいてきた問題ですが、あり方を抜本的に論議するときです。
大相撲再生は暴力団問題だけでは済みません。力士暴行死や大麻事件、元横綱朝青龍の相次いだ不祥事など、角界の体質にまで深くメスを入れ、改善していかなければ、公益法人としても社会から認められないでしょう。
閉ざされ、絶対服従の上下関係がいまだに色濃く残る封建的な世界。社会とのつながりが希薄で世間の常識が通用しない土壌が病理を生んできました。
土俵を通して人間性を高めるという相撲道も、「明文化され定式化されたものはなく、あいまいなもの」(協会広報)にとどまっています。その理解は各人まちまちで、実際、親方たちが力士教育のよりどころとする多くは、みずからの経験や各部屋の伝統です。いまの相撲協会には、伝統文化、「国技」として継承していくべきもの、時代とともに変えていくべきものの境界線も定かになっていません。これでは、何をどう改革するのか、自分たちで道筋をつけられないといわれても仕方がないでしょう。
外部の知恵も借りて
改革を進めていくうえで、外部の知恵や力も借りながら大相撲の将来を展望した理念や方針を示すことが大事です。
「宣言」のなかには「次代の力士を育成する部屋の責任を自覚し、地域に開かれ、地域に守られた健全な運営に努める」とあります。それを実現し、大相撲の発展を見据えるならば、何よりも力士の人権を尊重し、自主性をはぐくみ、社会の一員としての自覚を育てられる組織に変わっていくことが求められます。