2010年9月2日(木)「しんぶん赤旗」
主張
辺野古「移設」報告
県民無視の日米合意は撤回を
政府は8月31日、米軍普天間基地の「移設」先として名護市辺野古につくる新基地について、埋め立て方式で、2本の滑走路を「V字」型につくる現行案と、日本がもちだした滑走路1本の「I字」案の両案を併記した、専門家検討会合の報告書を公表しました。
沖縄県民は辺野古「移設」そのものに反対しています。V字案であろうとI字案であろうと県民が認めるわけがありません。普天間基地を抱える宜野湾市の伊波洋一市長や名護市の稲嶺進市長がきびしく批判するように、「移設」の合意そのものを撤回すべきです。
爆音被害隠したまま
5月に当時の鳩山由紀夫首相が結んだ日米合意は、普天間基地の辺野古「移設」を決めるとともに、11月までに日米で最終合意するため、新基地の工法、配置などの検討を「『いかなる場合でも8月末日までに』完了」と明記しました。報告書はこの合意にもとづくものです。菅直人首相は11月の沖縄県知事選後に最終決定するとしていますが、決定を先送りしても県民の怒りをかわすことはできません。
4月の沖縄県民大会は、普天間基地の閉鎖・撤去要求と辺野古「移設」反対の意思をつきつけており、「移設」のためのどんな計画案も県民が認めるはずはありません。「日米合意をしっかり実施する」といって辺野古「移設」に突き進むなら、抜き差しならない事態に追い込まれるのは明らかです。
県民の意思を無視して専門家会合の報告を強行し、「移設」の計画を進めるなど、本来許されることではありません。V字であれI字であれ新しく辺野古につくられる基地は、名護市民と周辺住民に爆音被害と墜落の危険を押し付けるものになるのは明白です。
専門家会合の検討を通じて、新基地の危険がいっそう明らかになったのは重大です。報告書は日本が提案したI字案について、「陸地をより多く上空飛行することとなる」とのべています。新基地では住宅上空は飛ばないとの政府説明とも矛盾する案を日本が主張するのは大問題です。
V字案ではさらに重大なことが発覚しています。有視界飛行の際の飛行経路について、日本政府の説明を米側が「うそ」だと否定し、最新鋭の輸送機オスプレイの配備を前提に飛行経路を広げるよう求めてきたのです。米側は早くからオスプレイの配備計画を伝え、それにあわせた飛行経路の設定を求めていたのに、それを隠して、都合のいい説明をしてきた日本政府の責任は重大です。
飛行経路の問題は今回の報告では継続協議とされていますが、飛行経路が広がれば当然爆音被害なども大きくなり、環境アセスのやり直しなども必要になります。それを隠した先送りはあまりにも県民・国民をばかにしています。
「移設」の作業を中止せよ
菅首相は普天間基地の辺野古「移設」について、県民の「理解を得る」と繰り返してきました。その言葉に忠実なら、県民を頭越しにした「移設」のための作業を直ちに中止すべきです。
普天間など多くの沖縄の米軍基地は、太平洋戦争の末期に沖縄を占領した米軍が国際法にも反して強制的につくったものです。撤去が決まっている普天間基地の「移設」でなく、無条件で返すよう米と交渉するのが政府のつとめです。