2010年8月31日(火)「しんぶん赤旗」
主張
円高・経済対策
中小企業への支援が急がれる
日銀が追加の金融緩和策を発表し、政府も経済対策の基本方針を決定しました。
日銀は金融機関に超低金利で資金を供給している「新型オペ」を拡充します。政府の経済対策は「エコポイント」の継続や大企業向けの補助金、規制緩和など従来の延長線上の政策が中心です。いずれも国民の暮らしに大きな効果は期待できません。
下請け単価たたき
ギリシャ危機をきっかけにした欧州経済の混乱や、米国経済の低迷が長期化する見通しが強まってきたことを受けて、ユーロ・ドル安、円高が進んでいます。
日本経済も先日発表された4〜6月期の国内総生産(GDP)速報で、家計消費をはじめとする内需の弱さが改めて浮き彫りになっています。内需の冷え込みや大企業の下請け単価たたきに苦しんでいる中小企業が、円高によって直接・間接に大きな打撃を受けることが心配されます。
ぎりぎりの経営を続けている輸出関連の中小企業にとって、円高による売り上げの減少は企業の存亡に直結します。
何より、輸出大企業が円高を口実にして下請け単価の買いたたきに拍車をかけていることが中小企業を苦しめています。「大手メーカーからのコストダウン要請が、川下メーカーに来ている」「取引先からのコストダウン要求が昨年末の急激な円高の際から強くなっている」―。経産省が27日に発表した「円高の影響に関する緊急ヒアリング結果」にも、中小下請け企業の悲痛な声が寄せられています。下請け単価たたきが今後さらに激しくなるのではないかという不安も広がっています。
生産の海外移転や人件費の圧縮、下請け単価の買いたたき、円建て取引の増加などで、大手製造業の円高「耐久力」は相当強くなっています。民間の経済研究機関の試算によると、大手製造業の利益が減少する為替相場の水準は平均で1ドル=80円、赤字になる対ドル相場は67円だといいます。大企業には200兆円を超えるばく大なため込み金もあります。
大手自動車会社の会長が円高は「限界を超えている」と訴えましたが、「限界を超えている」のは中小企業です。最優先すべきは固定費の直接補助など中小企業への抜本支援であり、下請け単価たたきなど円高を口実にした大企業の横暴を是正することです。
内需が長期低迷し、ますます輸出頼みを強めている日本経済のあり方そのものが、円高の影響を大きく増幅しています。大企業のため込み金と利益を雇用や中小企業に還流させ、内需をしんから温める経済システムへの転換に踏み出すことが求められます。これは、大企業の持続的な発展にとっても不可欠の転換です。
米政府にドル安是正を
米政府は輸出拡大で景気回復を進めるためにドル安を容認していると伝えられています。しかし、景気が上向けば輸入が大幅に増えて貿易赤字になるなどドル安は功を奏していません。米経済を立て直すためには米国内の生産と産業を立て直す以外にはありません。
米国には、基軸通貨国としてドルの価値を守る重い責任があります。国内対策や為替投機の規制と同時に米政府に堂々とドル安の是正を申し入れることも必要です。
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