2010年8月29日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
東京・上野の国立科学博物館で、先日、同館の研究者が「DNAが語る日本人の成り立ち」と題して語る企画がありました。「お盆休み」の最中で、小学生を含め、多くの人が詰めかけ、盛況でした▼DNAの研究で、在来系の縄文人と渡来系の弥生人の混血で日本人が形成されたという説が裏付けられる一方、縄文人の特徴を色濃く残した人々とみられていたアイヌは北方の人々との共通点が多いことがわかったといいます。興味深い話に引き込まれました▼最近、沖縄県石垣島の白(しら)保竿根田原(ほさおねたばる)洞穴で約2万年前の人骨が見つかりました。骨から直接年代がわかった人骨としては最古です。日本列島にヒトが住み始めたのは約4万年前とみられていますが、土壌の性質から古い骨はほとんど残っていません▼比較的多く見つかっているのが沖縄の島々です。約1万8000年前とされる港川人骨(八重瀬町)は、中学校の歴史教科書に記載され、海外の文献にも登場します▼しかし、遺跡自体はあまり知られていません。日本では石器などと一緒でないと、人骨は文化財保護の対象とならないからだといいます。近年、人骨にも文化にかかわる多くの情報が含まれていることが明らかになってきたと、東京大学の米田穣准教授が本紙学問文化欄(7月7、9日付)に書いています▼今日は60回目の「文化財保護法施行記念日」。人骨遺跡が、揺籃(ようらん)の地アフリカから日本列島にたどり着いた人々の旅路に思いをはせる場所となってほしいと思います。