2010年8月29日(日)「しんぶん赤旗」
主張
米戦闘部隊イラク撤退
憲章違反の侵略進めた責任
イラクから今月、米軍の戦闘部隊が撤退しました。オバマ米大統領は31日、ホワイトハウスの執務室からテレビ演説を行う予定で、イラクでの「戦闘作戦」の終了を宣言するとみられます。
今回の区切りまで、戦争は7年半近くに及んでいます。イラクの国土は荒廃し、民間人の犠牲者は約10万人。戦火を逃れ厳しい暮らしを強いられている人々は国内外に350万人もいます。米兵の死者も4400人を超えました。
「誤った戦争」
オバマ大統領はイラク戦争を「(米国が)選択した戦争」と呼びます。強いられた戦争ではなかったとすることで、戦争に突き進んだ判断の誤りを認めています。
開戦前、米国はイラクが大量破壊兵器を保有していると主張しました。それが戦争の口実にすぎなかったことは、国連査察による疑惑解明の可能性を、開戦によって強引に断ち切ったことでも明らかです。実際、イラクで大量破壊兵器はみつかりませんでした。
米国はイラクに対して、自らがつくった青写真による「体制転換」を押しつけようとし、意にそわないフセイン政権(当時)を軍事力で転覆したのです。イラク戦争は米国が自ら望んで、ウソで固めて強行した戦争でした。
これが違法な戦争だったことはとりわけ重大です。ブッシュ前米政権は国連安保理事会にイラク開戦への同意を迫りましたが、それは国連を都合よく利用しようとしたにすぎませんでした。安保理は開戦を認めませんでした。米国は世界の世論を振り切ってイラクに侵攻したのです。それは侵略行為そのものであり、国連憲章に反した違法な戦争でした。
国連憲章は紛争を平和的に解決するよう求めています。そのうえで、平和に対する脅威、破壊、侵略行為に対しては、安保理の決定によってのみ軍事措置がとれるとしています。
イラク戦争を「誤った戦争」としてだけでなく、「違法な戦争」だったと認めることが必要です。それこそが、国連を中心とした真の多国間協力の基礎を築くことになります。
ブッシュ前政権は、違法な戦争への“国際的支持”を装うためにも、米国に追随する同盟国などに派兵を求め、「有志連合」に組織しました。当時の小泉純一郎政権もその先頭に立ちました。
「どこが非戦闘地域で、どこが戦闘地域かと、今この私に聞かれたって、わかるわけないじゃない」―「非戦闘地域」に限るとされた自衛隊の派兵が米政権の言うがままだったことを、小泉首相自身の発言がさらけ出しました。政府はいまも「誤った戦争」と認めていません。戦争を無批判に支持した政府判断の検証は不可欠です。
派兵の検証を
自衛隊派兵の検証について、岡田克也外相が「将来の課題」としていることは、国民の期待に反するものです。派兵は国連憲章と憲法を踏みにじる重大決定であり、日本政府はいまこそ真剣に反省すべきです。
戦闘部隊は撤退したものの、イラクにはなお5万人の米軍が駐留しています。米国防総省は「戦争が終わった」との見方を否定しています。完全撤退まで動向を監視するとともに、イラクの復興を支援していく必要があります。
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