2010年8月28日(土)「しんぶん赤旗」

主張

新「安保防衛懇」報告

軍事大国化めざす危険な挑発


 政府の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(新「安保防衛懇」、座長・佐藤茂雄京阪電鉄最高経営責任者)が、年末に予定される新たな「防衛計画の大綱」策定に向けた提言をまとめ、菅直人首相に提出しました。

 報告書は、「もっと能動的な『平和創造国家』」を旗印にして、軍事的役割の強化・拡大を迫っています。「非核三原則」や「武器輸出三原則」の見直しなど、軍拡に歯止めをかけてきた原則をだいなしにする内容です。日本の軍事大国化をめざす危険な挑発であり、許すわけにはいきません。

平和原則すべてを敵視

 「防衛計画の大綱」は軍拡を進めるための政府の計画で、2004年12月につくられた現行の「大綱」は、昨年8月の「安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告を受けて、昨年末までに見直されることになっていました。しかし昨年の総選挙で政権が交代したため今年12月まで1年先送りされ、鳩山由紀夫前首相が改めて立ち上げたのが新「安保防衛懇」です。

 注目されるのは報告書が、「将来、同盟国に対する米国の安全保障上の期待が高まる」と予想して、日本が「地域の安定を維持する意思と能力を持つ」ことがこれまで以上に「重要となる」としていることです。04年「大綱」は、イラクに自衛隊が派兵されたような「国際平和協力活動」を自衛隊の本来任務として打ち出しましたが、その方向をさらに強めるものです。

 とりわけ重大なのは、報告書がこれまでの「基盤的防衛力」構想を見直すなど、憲法にもとづく自衛隊と日本の軍事活動に対する制約を正面からつきくずす提言を持ち出していることです。

 日米共同作戦のさい、アメリカ本土に向かう弾道ミサイルを自衛隊が撃ち落とすことは集団的自衛権の行使となり、政府見解でも憲法違反です。米艦を守るために自衛隊が武力行使することも憲法違反です。こうした制約を取り払い、憲法の「解釈や制度を変え(よ)」という提言はまさに重大です。

 日本の核武装や「核持ち込み」を禁止してきた「非核三原則」についても報告書は、「一方的に米国の手を縛る」のは「賢明でない」といっています。アメリカが日本を足場に核攻撃を始めることも容認する、日本を核攻撃の基地にする危険な主張です。被爆国として許されません。

 兵器の海外輸出を原則的に禁止してきた「武器輸出三原則」を国際協力の「妨げ」だと攻撃し、武器の「輸出を可能にすべき」と提言しているのも問題です。財界や兵器産業界の要望を受け入れたものであるのは明らかです。

政府の態度が問われる

 アメリカと財界の言い分を丸のみする新「安保防衛懇」報告の危険性は明らかです。「大綱」改定の作業を進めることになる政府の対応が問われることになります。

 報告書の立場は、軍事力ですべてに対応しようという時代遅れの考えです。アジアと世界で「核兵器のない世界」の実現のための世界的取り組みが強まり、紛争を政治的・外交的に解決する平和の流れが大きくなっているのに、ことさら軍事緊張を強める提言をこのままにはできません。報告書の危険な挑発にのらず、軍事大国への道をきっぱり拒否することこそ、国民の願いです。





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