2010年8月27日(金)「しんぶん赤旗」
民主党代表選
反省なき不毛な争い
民主党代表選は26日、小沢一郎前幹事長の出馬表明によって、同氏と菅直人首相との党を二分してのたたかいとなることが必至の情勢となりました。しかしそれは、国民不在の不毛な権力闘争でしかないといわざるをえません。
過去最悪の若年失業率(11・1%)、円高・株安、社会保障“崩壊”の放置、こうした状況を前にいま、政府・与党が、直ちになすべきことは山積みです。
連日の政局報道で見せつけられる民主党所属議員の数合わせを「そんなことをやっている場合か」とイライラしながら見ている国民も少なくないのではないでしょうか。
政府はようやく、「追加経済対策」の検討を始めましたが、大企業に社会的な責任を果たさせるという観点をまったく欠いた小手先の対策では、焼け石に水でしかありません。
民意受けとめ
そもそも、参院選後、民主党がまずやるべきことは、同党の大敗として示された民意を真摯(しんし)に受け止め、反省すべきことは反省して政策を切り替えていくことだったはずです。
菅首相の「消費税10%」発言には国民の強い反発が示され、選挙後の世論調査をみても、消費税増税「反対」が54%(「朝日」7月14日付)となるなど「賛成」が多数だった時点から大きく変化しました。ところが、首相は、選挙後の臨時国会でも「消費税に関して引き上げることも含めての議論は当然だ」とのべ、自民党などとの協議を推進。最悪の不公平税・景気破壊税である消費税増税を大企業減税とともに押し付けようという旗を降ろそうとしていません。
一方、対抗馬として立つ小沢氏は、「政治とカネ」をめぐる疑惑を抱え、秘書ら3人が逮捕されても、検察審査会で「起訴相当」が議決されても、開き直ってきました。国民の批判を浴びて2カ月前に幹事長を辞任したばかりですが、いまだに何の説明責任も果たしていません。ある民主党議員が「世論や野党が厳しい目で見ているが、(代表になっても)その後の大きな波紋をどう乗り越えるつもりなのか」と語っているように、いったいなんのために立候補するのかといわざるをえません。
小沢氏系議員は、総選挙マニフェストでの「約束の実行」を大義に掲げます。しかし、小沢氏は、この6月まで幹事長として鳩山由紀夫前首相を支え、後期高齢者医療制度の廃止先送りや派遣法「改正」案のザル法化、米軍新基地建設の「日米合意」など、肝心要の点で国民を裏切ってきた民主党を率いてきた最高責任者の1人でもあります。
矛盾は深まる
この点では、「政権交代」当初から閣僚だった菅首相にも同様の責任があります。さらに菅首相は、小沢氏の「政治とカネ」の問題について「辞任という形で自らけじめをつけられた」とかばい立てしてきました。
どんな代表選を繰り広げたところで、反省がなければ、国民との矛盾は深まらざるをえません。(藤原直)