2010年8月27日(金)「しんぶん赤旗」

主張

米価暴落対策

需給と価格の安定は国の責任


 猛暑が続くなか、今年も新米の季節がやってきました。豊かな実りと食生活が実感される時です。

 しかし、この実りがいつまで続くか、農家にとっても消費者にとっても不安な状況です。生産者米価の大暴落がその中心です。民主党政権がまったく対策をとらず、暴落を野放しにしていることが重大です。

生産意欲を失わせる

 生産者米価は近年暴落を続け、多くの農家が労賃分も出ない状況で、全国で耕作放棄が広がる要因になっています。政府の調査でも、コメ60キログラム当たりの生産費は1万6497円(2008年産全国平均)ですが、今年6月の平均価格は1万4120円と2300円も下回ります。出荷が始まった高知県などでの農家への仮渡し金は1万円と報じられるなど、米価暴落はとどまる気配がありません。

 米価が暴落を続ける原因は、1995年以来価格政策が廃止されたうえ、需給計画の狂いによる在庫量の増大に、大手量販店を主力にした買いたたきとコメの安売り競争、政府が備蓄米を安値放出したことなどが重なっています。輸入米(ミニマムアクセス米)による圧力も重要な要因です。

 米価暴落は米作農家を困難に追い込むだけでなく地域経済にも大打撃を与えています。雇用破壊と低賃金のもとで安い食料品が求められ、コメとともにさまざまな農産品にたいする大手流通企業の買いたたきや安売り競争が横行し、農家や中小業者には必要な経費を無視した価格が押し付けられる、まさに悪循環です。

 民主党政府が導入した戸別所得補償も、生産者米価が生産費を下回る事態が常態化し、現在の米価では生産を維持できないことを認めた政策です。米価と生産費の差額を面積で換算して支払う補償額も10アール当たり1万5000円と十分とはいえません。しかも政府は戸別所得補償があるから価格対策は必要ないとして、備蓄制度を活用して政府が過剰分を買い入れて暴落を防ぐという、農協や農民運動全国連合会(農民連)などの要求を拒否しています。

 7月に公表された「需給及び価格の安定に関する基本指針」の価格安定対策は、生産目標(減反)の達成だけです。備蓄については、民主党が「マニフェスト」に掲げた棚上げ方式(一定期間過ぎて使用しなかった備蓄米は食用以外に処分する)さえ否定し、「食用として販売した数量を買い入れる」とし、販売量が少なかった場合には買い入れ量も減らすとしています。価格暴落による深刻な影響は、まったく考慮されていません。

過剰米の買い入れこそ

 コメの生産は政府が需給計画と生産量の目安をしめし、その範囲で生産した農家が戸別所得補償の対象になります。しかし豊凶などによる収量の変動は避けられず、消費量も経済情勢や他の食品の価格との関係でも変動します。安定した生産のためにも価格の下支えは不可欠です。

 戸別所得補償制度を農業の再生に役立つように運営するためにも、コメをはじめ農産物の生産者価格の安定は大事な条件です。国の責任で過剰米を緊急に買い入れるとともに、価格保障の確立を基礎に、国内農業を多面的に発展させ、安全な食料の安定供給をめざす政策への転換が必要です。





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