2010年8月26日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
ことし前半の輸出の伸びはめざましい。1年前より4割ふえて、貿易黒字も6・3倍に▼自動車の輸出は、アメリカ向けが65%増、中国向けが1・4倍で、とくに目立ちました。と、ここまでは政府調べの統計です。数字の裏にどんな現実があるか、昨日付本紙の1面記事があばいています▼いすゞ栃木工場。生産の回復で、休日返上の残業が続きます。作業中、急に倒れて「過労」と診断された50代の社員。「体がもたない」と辞める人。人手が足りません。不況さなかの08年末に、期間・派遣社員が1400人解雇されています▼だから、正社員がくたくたです。解雇の撤回を求め裁判に訴えた12人が、こう訴えます。「即戦力の私たちを正社員にして職場に戻せば、会社のためにもなる」。しかし、会社は聞こうとせずに、また期間社員を募ります▼自動車などの産業が、労働者や下請けをしぼりあげ、生産・輸出を伸ばしてはもうけをふやし、貿易黒字もふくらませる。円高への道です。すでに、15年ぶりに1ドル=83円台の円高を記録しました。政府も、輸出をふやしたくてドル安・円高をのぞむアメリカの本音に遠慮し、手をこまぬいているかのようです▼ここで大企業が、いすゞのようなやり方に勢いをつけるなら、さらに円高を招いて悪循環を断ち切れません。大企業も、そんなことは長年の経験でも理屈でも分かっているはずでしょう。分かっていながらやめられないのなら、働く人々の運動で、政治の力で、思い知らせるまでです。