2010年8月25日(水)「しんぶん赤旗」

主張

空襲被害者全国組織

補償のための立法制定が急務


 空襲被害者への国家補償を定める立法化を求めて空襲被害者やその遺族などが「全国空襲被害者連絡協議会」を発足させました。

 連絡協議会は「東京大空襲」訴訟の原告団などが呼びかけたもので、東京のほか大阪、名古屋、佐世保(長崎)、沖縄など全国25都市の被害者などが参加しました。東京地裁が昨年12月の「東京大空襲」訴訟判決のなかで、国会が「立法を通じて解決すべき問題」との判断を示したため、全国の空襲被害者がはじめて全国組織をつくり、補償立法の実現をめざします。

許されない差別的扱い

 第2次世界大戦では全国200カ所をこえる市町村が空襲を受け、原爆被害を含め50万人以上の民間人が亡くなりました。

 1945年3月10日の「東京大空襲」では、米軍はほとんどの住宅が木造であることに目をつけ、浅草など下町の住宅密集地に焼夷(しょうい)弾を大量に落とし、焦熱地獄にしました。短時間で死者10万人以上、被災者100万人以上が犠牲になりました。無差別爆撃はこの後全国の都市に広がり、広島・長崎には原爆が投下されました。

 そのとき助かった被災者もやけどや手足の損傷、失明などの後遺をかかえるとともに家族を失うなど消すことのできない心の傷でいまなお多くが苦しんでいます。

 戦争をおこしたのに政府が責任を負わないのは理に反します。戦争犠牲者への補償は当然です。65年がたち空襲被害者も高齢化しています。一日も早く国家補償を実現することが必要です。

 問題は日本政府が空襲被害者の救済に冷淡な姿勢をとり続け、補償要求を拒んでいることです。戦争による空襲被害者に国家補償をしている諸外国と比べてあまりに冷たい態度です。ドイツ、フランス、オーストリアなどは軍人と民間人の区別なく補償しています。こうした国々にならい、軍人と民間人を差別しない国家補償の実現をこそ日本はめざすべきです。

 軍人は「国が徴用して国家のために武器を持たし戦わした」から国家補償が当然というのが政府の言い分です。しかし国民も国家総動員法(38年)で戦争協力義務を課され、「一億火の玉」といって戦争協力においこまれました。「一億玉砕」などといって一般国民に戦争協力を強制したのは政府です。81年4月の国会で園田直厚生相(当時)が軍人・軍属のみの救済について「理論としてなかなか筋の通らぬところもある」と認めざるをえなかったのは当然です。

 軍人と一般国民を差別するのは、憲法14条の「法の下の平等」に明白に違反しています。軍人・軍属などには軍人恩給や援護年金などで総額60兆円以上もの補償・援護をしながら、一般国民被害者には補償しないという差別的扱いをただちに改めるべきです。

国会の立法責任は重い

 東京地裁の判決は、戦争被害のなかから救済、援助の対象者を裁判所が選ぶわけにはいかないといって、「国会が様々な政治的配慮に基づき、立法を通じて解決すべき問題」とのべました。政府が空襲被害者補償に背を向けている以上、国会が補償立法をつくり、事態の解決に向けて道を切り開くしかありません。

 すべての政党、国会議員は空襲被害者の願いを実現するため、力をつくすことが求められます。





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