2010年8月24日(火)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 孤立と貧困。事件を読み解く鍵は、ここにあるようです。電気代が払えず熱中症で亡くなった76歳の男性。同居の40代の息子は無職で父親の年金だけが頼りでした。母親の死亡届を出さないまま9年間、白骨体と暮らした64歳の男性。不正受給した年金は生活費に充てていました▼8日付本欄で61人と書いた居場所のわからない「100歳以上」のお年寄りは、いまや300人に迫る勢い。高齢者の差別医療が進む一方で、平均寿命が伸び続けるのはこういうわけであったかと、現代社会の深い闇に立ちすくむ思いです▼5年前にも同じことがありました。長寿番付19位の「110歳」の女性が40年以上前に失踪(しっそう)していたと判明。これを機に2005年の長寿番付は大幅修正され、翌年は番付自体が廃止に▼消えたお年寄りの中には、身元をつかめず遺体の引き取り手もないため「行旅(こうりょ)死亡人」として処理された人もいるでしょう。地縁、血縁、会社の縁のすべてが切れて一人ひっそり死んでいく。地方の衰退や雇用形態の激変で「無縁死」が急増していると特集したNHKの番組が頭をよぎります▼そんな中で長妻厚労相が打ち出したのは「一定期間、医療機関を受診していない不明者には年金支給を停止する」という方針でした。機械的な線引きで受診したくてもできない高齢者を切り捨てることだけはあってはなりません▼弱肉強食路線の末路に何があるのか。ヌエのような匿名社会で何が起きているか。社会病理の根っこにあるものに目を凝らしたい。





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