2010年8月22日(日)「しんぶん赤旗」
主張
大学新卒者の就職難
打開へ真摯なとりくみを
就職難に直面している学生を支援するため、卒業後も最低3年間は新卒扱いとすることを検討すべきだ―日本の科学者を代表する日本学術会議が提言をまとめ、文部科学省に提出しました。
提言は大学教育の向上を求める文科省の依頼で作られましたが、学生が就職活動に多大な労力をとられ、大学教育にも困難が生まれている現状を前に、就職活動のあり方の見直しに踏みこみました。
「超氷河期」の実態
背景には、「超氷河期」といわれる就職難があります。「何十社も受けたけど全部ダメ。自分は社会から必要とされていないのか」―痛切な声が絶えません。
文科省によれば、今年3月卒業した大学生の就職率は、2年連続で下落し60・8%。しかも、前年度比7・6ポイント減と過去最大の落ち込みです。大学は卒業したものの、進学も就職もしなかった若者は8万7千人で、卒業者の16・1%(同4ポイント増)に上ります。
このなかで、就職活動のルールの確立や、就職活動する学生への支援が切実に求められています。
「3年生から就活に追われる」―就職活動の早期化と長期化が進み、ゼミに人が集まらなかったり、専門学問を十分学べないまま卒論執筆に追い込まれるなど、問題が起きています。学生に負担というだけでなく、大学教育にも支障をもたらしており、学生を受け入れる企業にも損失です。
いったん卒業したら、翌年度の卒業予定者を対象とした採用に応募できない企業の募集のやり方も、問題を深刻にしています。「新卒時に正社員になれないと人生が閉ざされるのでは…」と切迫感を強いられ、新卒として就職活動を続けるために、高い学費を払って留年する学生も増えています。
地方に住む学生にとっては、就職活動で東京などに出向く際にかかる交通費や宿泊費の負担も小さくありません。
学業と両立できる就職活動のルールを作ること、卒業後3年間は「新卒扱い」とすること、就活する学生への経済的な支援をおこなうこと―これらの施策は、少しでも現状を改善するうえで、すみやかな実現が期待されます。
同時に、新卒者の求人が減少している大もとに、景気悪化だけでなく、大企業による非正規雇用の拡大があることに目を向けることが大切です。
非正規雇用を拡大した労働法制の規制緩和を抜本的に見直し、「雇用は正社員があたり前」の社会へ転換し、新規採用を増やすべきです。異常な長時間労働をただし、雇用を増やすことも必要です。
日本共産党は4月、「社会への第一歩を応援する政治に」の見地で、雇用の確保とともに就職活動のルールを作ろうと提起した政策を発表し、世論に訴え、メディアからも注目されました。大学人との懇談、政府や自治体への働きかけ、学生との対話と共同もすすめています。
国民的世論で解決へ
大学で学び卒業した若者が、社会人としての第一歩で働く場をもてないでいる現状は、日本の経済と社会の全体にとって打撃です。
今こそ、この危機の打開にむけた国民的世論をおこし、国も自治体も教育者も、そして何より企業と経済界が、真摯(しんし)なとりくみをおこなう時です。
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