2010年8月21日(土)「しんぶん赤旗」
年金施設301売却完了
買い手ずらり大手不動産
回収 つぎ込んだ金の2割
国民が納めた年金と健康保険の保険料など約1兆1300億円をつぎ込んで建設された厚生年金会館や宿泊施設「サンピア」などの年金福祉施設の売却が、すべて完了したことが20日、わかりました。大手不動産会社やマンション業者などの営利企業が格安で多数取得しており、国民の貴重な財産が、もうけの対象となったことが改めて浮き彫りになりました。
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年金福祉施設の売却を進めてきた独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」(RFО)の発表(17日)によると、国から指示を受けた301施設421物件の売却をすべて完了。売却総額は約2221億円。経費などを除いた国庫への納付額は約2023億円。つぎ込んだ1兆円以上の2割程度しか“回収”できておらず、「保険料のムダづかい」という批判が裏付けられたかっこうです。
しかも、RFОがホームページで公表している落札結果一覧によると、営利企業がずらり(表参照)。地方自治体が落札したのは、札幌市の北海道厚生年金会館など17施設だけで、ほかは民間法人か個人でした。
東京厚生年金会館を120億円で落札したのは、ヨドバシカメラ。カメラ博物館などにする予定。野村証券系の野村不動産は、国民年金総合健康センター「こまばエミナース」を85億6500万円で取得。8階建てマンションを建設する計画です。
長谷工コーポレーションは、愛知厚生年金会館を積水ハウスとともに65億1300万円で取得、「サンピア和歌山」を日本商業開発とともに42億6500万円で取得、共同住宅や商業・住宅の複合施設開発を計画しています。また、東京・錦糸町の土地(約1680平方メートル)を28億円で落札、すでに15階建てマンションを販売しています。
「かんぽの宿」買収が国会でも取り上げられた温泉レジャー会社「大江戸温泉物語」と、その不動産関連会社「キョウデンエリアネット」グループは「サンピア会津」(5億500万円)など4施設を計10億1400万円で取得、「平日限定特別プラン 1泊2食6700円」などと宣伝しています。
マンション販売大手「穴吹工務店」グループも「ながさき社会保険センター」(4億500万円)など6施設7物件を計約35億円で取得しています。
このほか、オリックス不動産が大阪厚生年金会館を36億円で取得、「分譲マンションおよびホール」を計画しています。
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