2010年8月20日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「ネコまたぎ」を辞書で引くと、「まずい魚をいう」とあります。魚が大好きなネコもまたいで通り越す、というわけです▼しかし、よく「ネコまたぎ」にたとえられるサンマの場合はどうでしょう。夏目漱石の『吾輩は猫である』の「吾輩」など、サンマに目がありません。サンマはうまい。漁業関係者にとって「ネコまたぎ」は、次のようなときの言葉です▼大漁でサンマが山のように水揚げされ、魚好きのネコさえうんざりして通り過ぎる。ことし、「ネコまたぎ」はみられないかもしれません。サンマの不漁が伝えられます。北海道から始まるサンマ漁。根室・花咲港への、ことし初の大型船の水揚げは、昨年の10分の1ほどにとどまりました▼陸へあがる漁師たちの、表情は険しい。直後の競りで、昨年の10倍の高値で取引されたそうです。不漁が続けば、昨年なら1匹100円ぐらいで食べられた庶民の旬の味が、高根の花になりかねません▼サンマ不漁も猛暑のせい、といいます。海水温が高く、魚群が散らばったり遠くの海へ移ったりしたようです。資源量も減っています。「魚種交代」説は、あてはまるのでしょうか。日本の太平洋側でサンマ・マイワシ・マサバが、えさのプランクトンの配分をめぐって増えたり減ったりする、という学説です▼サンマは、おいしいうえに色も形も美しい。それが、手ごろな値で食卓に並べられてきたのですから、ありがたい魚です。歳時記から一句。「美しく秋刀魚(サンマ)の骨の残りけり」(仁平勝)