2010年8月20日(金)「しんぶん赤旗」

主張

生保政界工作

「御用政治家」で恥じぬのか


 第一、日本、住友、明治安田の生命保険大手4社を中心とする生保業界が、保険金不払いという重大な不祥事の発覚後、大がかりな政界への不正工作を行っていた疑惑が浮上しています。

 保険金不払いの隠ぺいを図り、政治力を使って批判を押さえ込もうとしたとすれば言語道断です。

国政調査権を売る

 生命保険業界の不正な政界工作のピークは、2007年5月の衆院財務金融委員会です。05年以降、業界ぐるみで不払いが大量に発覚するなか、同委員会による生保関係者の参考人招致は、当初大手4社、2時間半の日程で与野党が一致しました。ところが、予定期日の直前に自民党が、参考人を1人にしぼり、時間も1時間だけに短縮する日程を、与野党の合意をくつがえしてごり押ししました。

 「厳しく追及されたくない」という生保業界が、当時の自民党の金融関係の有力者、財務金融委員会の理事メンバーに執拗(しつよう)な要請をし、国会運営をねじまげた疑惑が濃厚です。

 保険金不払いは判明しているだけで135万件、約973億円に上り、広範な保険契約者、国民の利益を損なっています。国会がその解明にあたることは国政上の責務です。そのための参考人招致の運営を業界の意向に沿ってねじ曲げたとすれば、国政調査権をカネで売ったに等しい重大な腐敗、疑惑といわなければなりません。

 その大本には、生保業界がパーティー券購入や接待を通じ、系統的に政治家との癒着関係を築いてきたことがあります。生保業界は金融関係の議員らを、「業界に深い理解があり活躍が期待」できる「主要議員」から、「友好議員」、「友好議員候補」などと業界への「理解度」でランク付けし、資金提供額に格差をつけ管理しています。

 この中には、岡田克也外相ら民主党の現職閣僚も含まれています。岡田氏の事務所は本紙に、「同社(第一生命)に限らずいろいろな企業を訪問している」と説明しました。保険業界との関係は他の企業と横並びで、特別なものではないといいたいのでしょう。

 生保業界は、自らの意向通りに動く「御用政治家」を獲得、育成するために、勝手な尺度で格付けまでしながら、政治家にカネを贈り続けています。岡田氏らは、こんな業界に資金を仰いだことを恥とは思わないのか、国民に説明する必要があります。

 生保政界工作問題は、企業・団体献金の賄賂(わいろ)性について大きな示唆を与えています。個々の公共事業、許認可などで対価性がはっきりした賄賂もあります。長期に反復して贈られる企業・団体献金は何か起きたときの「保険」の意味合いも含め、政治を自らの利益のために使うことを確信的に意図した賄賂であり、篤志家による浄財などではないということです。

徹底解明が不可欠

 生保政界工作で改めて浮かんだ腐敗の根源を取り除くために企業・団体献金を禁止すべきだという日本共産党の追及に、野田佳彦財務相は「お話の通り、廃止すべきだ」と答えています(3日の衆院財金委員会)。これを言葉だけにせず、早期に実現を図るべきです。

 国会の権威をかけ、生保政界工作疑惑の全容解明にあたることが国会の責務となっています。





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