2010年8月19日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
昔の人々は、夏の暑さをどう乗り切ろうとしたのでしょう。とりあえず、江戸時代の学者・貝原益軒の『養生訓』を開いてみました▼「四季の中で夏はもっとも保養に心がけなければならない」と書いています(伊藤友信・現代語訳)。体が衰弱する暑気あたり、下痢や嘔吐(おうと)をともなうさまざまな病気にかかりやすいからです▼真っ先にあげる「保養」の方法は、冷えた生ものの飲食の禁止です。涼風に長く当たるな、とも説きます。お風呂に入ったあとや寝ている時、風に当たるのもだめ。益軒によれば、いくら暑くても涼しくしすぎてはいけません▼欲を抑えた慎み深さが健康づくりのもと、と考えた益軒らしい教えです。老人に対しては、念入りに注意します。「ひとたび病気をすると、身体がひどくそこなわれて」しまう。「残暑のときはとくに恐れて用心を」「(大暑のときに)外出してはいけない」▼いまなお、なるほどと思えるところは多い。ただし、いま益軒が生きていて東京や大阪、埼玉・熊谷や三重・桑名のことしの暑さを体験したら、少し考え直すかもしれません。たとえば、暑苦しくて息苦しくて眠れない熱帯夜のクーラーは仕方ないだろう、と▼東京23区では、梅雨明けからの1カ月に分かっているだけで100人が熱中症で亡くなりました。屋内で96人。7割が独り暮らし。死亡時間のはっきりした61人のうち24人が、夜間に亡くなっています。見守り活動の努力も追いつかないありさま。歯がゆさ、憤りが募る残暑です。