2010年8月18日(水)「しんぶん赤旗」
シリーズ 検証 公務員削減
小・中学校
非正規教員が9人に1人
公務員削減は、未来の社会をつくる子どもの教育にも影響をおよぼしています。
今、学校現場では正規教員が減り、非正規教員が急増。公立の小中学校では9人に1人(2009年度)が非正規の教員となっています(グラフ上)。都道府県ではなく、市町村が独自に採用している教員を含めると、さらに非正規率は高まります。
全日本教職員組合によると、埼玉県では、4割の先生が非正規で働いている小学校もあるといいます。
東京都や埼玉県で20年、臨時教員をしているAさんは、基本的には1年で学校を替わるか、任用が終了します。「子どもの成長を長いスパンで考えられない」と悔しがります。
埼玉県で、特別支援学級で正規教員を務める教員は、臨時教員が増えると「1年生の時はどうだった、2年生の時はここが成長した、だから今はこういう指導が必要という話をすることが、教員同士で困難になる。教育に臨時はない。正規職員にすべきです」といいます。
地方に丸投げ
さいたま市では、国の基準に上乗せして市独自にサポート教員として159人採用(単年度契約)しています。ただしそれは、勤務時間1日5時間の臨時教員です。同教員の一人は、「勤務時間内では担任の先生と打ち合わせをする時間もない」と語ります。「子どものためによりよい教育をしようと思うと、サービス残業となります」
この教員の時給は1210円、年収は80万円にも満たないため、生活保護を受給しながら仕事をしています。
非正規の教員は、職場内の立場も弱くなります。次年度の任用のことや本採用のことを考えると、校長のさまざまな提案に「子どもにとって良いことなのか、疑問があっても意見が言えない」とAさんは話します。
正規教員の負担も重くなっています。特別支援学級に勤める正規教員は、「正規の教員も、臨時教員には相談に乗ったり、配慮している。ただ、忙しすぎて、じっくり見てられないという状況も全体としてはあるのではないか」と話します。
非正規教員の増加の原因は、少人数学級など教育条件を充実する責任を、国が地方に丸投げし、06年に成立した行政改革推進法で、正規の教員採用を抑制してきたことにあります。
少人数学級を求める声や教育困難が広がる現場の実態に押されて、01年から40人以下の少人数学級編成が認められるようになりましたが、それは地方が財政負担すれば、という条件のもとでした。
同時に、正規教員1人を1日4時間の非正規2人にふりかえることなどが認められたため、非正規の採用が増えたのです。
安上がり教育
04年には、「総額裁量制」が導入されました。これは、法律で定められた教員定数分の給与総額の範囲内で、給与水準や教員数を地方が決められるようにしたもの。これにより給与水準を引き下げて教員数を増やすやり方が広がりました。
千葉大学名誉教授の三輪定宣さんは、「教員を非正規にというのは教育を安上がりにすること。それでは、子どもにとってマイナスだし、いい教員も育てられない」といいます。日本の国と地方自治体の総支出に占める教育分野の割合は、9・5%しかなく、国際的に低水準(グラフ下)です。三輪さんは、「教育予算を拡充し、正規職員を増やすべきです」と語ります。(前野哲朗)
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