2010年8月18日(水)「しんぶん赤旗」

主張

「無料低額宿泊所」

違法を「必要悪」と認めるな


 家を失った人に路上で「生活保護がとれるから」と誘いをかけ、施設に住まわせる。部屋は4畳半をベニヤ板で仕切った2畳程度、食事はレトルト食品やカップめん。保護費から多額の家賃、食費がピンハネされ、通帳まで管理されて、出て行く自由もない―悪質な「無料低額宿泊所」をめぐって、社会的な批判が広がっています。

 弱い立場にある人の「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)を支える生活保護が、「貧困ビジネス」の食い物にされているのはゆゆしき事態です。

制度的矛盾が背景

 一昨年の「年越し派遣村」以来、貧困問題に社会的な関心が高まるなか、「無料低額宿泊所」の実態に光があたりはじめました。大手の「宿泊所」業者が初めて脱税で摘発された事件では、名古屋地裁が7月に有罪の判決を下しました。この業者の幹部3人が3年間に隠したとされる所得はなんと5億円。よほど「もうかる」仕組みがつくられているようです。

 厚生労働省は昨年10月から省内に、規制のあり方についての検討チームを立ち上げました。同11月の「事業仕分け」もこれを議題にしました。この動きと並行して、民主党内の議員連盟が「規制」のための法案をとりまとめています。▽住居の提供と食事の「抱き合わせ取引」規制▽事業計画や収支の公開で「適正な運営確保」▽国、自治体の支援―などが骨子です。

 これに対して、現場で路上生活者の支援をしている法律家らの団体が強い反対を表明しています。民主議連の法案は、「規制を強化する」どころか「問題業者を温存し、育成する結果となる」と手厳しい内容です。悪質「宿泊所」をはびこらせた制度的な矛盾を改めるのでなく、現状を追認した新規立法ではかえって有害だというのです。

 家を失った人が生活保護を申請した場合、福祉事務所は「住所や家がない人は保護できない」などと追い返してきました。いわゆる「水際作戦」です。これにつけこみ、悪質業者が入居先を用意したうえで保護の申請をさせると、福祉事務所は申請者の希望や処遇の劣悪さなどおかまいなしに、保護を決定します。住居の確保まできめの細かい支援が必要なのに、悪質な業者を「必要悪」、使い勝手のよい受け皿として利用してきた行政の姿勢が大きな問題なのです。

 日本弁護士連合会は6月、「宿泊所」問題で意見書を出しました。社会福祉法は、「一時的」に住む施設として「無料低額宿泊所」の開設を認めています。入居者を何年も囲い込み、離脱をじゃまする悪質な「宿泊所」は、現行の社会福祉法にてらしても違法だと指摘。規制は可能なのに、法解釈と行政運営を誤らせるもとになった過去の厚労省社会・援護局長通知などの廃止、現行法での厳格な規制の実施と支援の拡充を強く求めています。

実効ある規制を

 悪質「宿泊所」の排除を求める声は、各自治体で意見書が議決されるなど、広い社会的な合意となっています。日本共産党は、悪質業者や団体の野放しを許さず、実効ある規制づくりをすすめることを求めています。

 生活に困った人が悪質業者の食い物にならず、きちんと支援を受けられる社会へ、貧困問題の解決を急ぐべきです。





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