2010年8月17日(火)「しんぶん赤旗」
主張
4〜6月期GDP
暮らしと内需重視への転換を
内閣府が発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)速報によると、前期比の成長率は年率に換算して実質で0・4%増、名目ではマイナス3・7%となりました。
民間の調査機関は実質2%以上のプラスを予測していましたが、結果は大きく下回りました。内需が予想よりもかなり弱かったためです。輸出は好調を維持しています。しかし、企業の設備投資の伸びが縮小するとともに、家計消費は横ばい、住宅投資が5%減となるなど、国内需要はマイナス0・9%に落ち込んでいます。
大企業の輸出主導では
好調な輸出も前期と比べると増加のテンポが遅くなっています。世界経済はアメリカ、ヨーロッパで停滞感が強まり、中国でも回復の足取りが鈍くなっています。輸出の先行きは楽観できません。輸出主導の景気「回復」の限界が鮮明になっています。
何より、輸出大企業の収益は2年前のアメリカ発の経済危機以前の水準にまで回復してきているのに、国内の雇用や家計には利益が波及していません。輸出大企業は依然として非正規雇用を中心に雇用を減らしており、失業率は5%を超えて悪化しています。4〜6月期の名目雇用者報酬が減少するなど、家計にはマイナスの影響が及んでいるのが実態です。
収益を回復している大企業とは対照的に、日本の雇用の7割を支えている中小企業には景気回復の実感はありません。大阪の信用金庫が7月に実施した府内の中小企業調査によると、79・5%が景気回復を「実感」できず、むしろ「停滞」や「悪化」を感じているとしています。その理由として、売り上げの低迷や値引き要求の強まりが挙がっています。国内需要の冷え込みや大企業による下請け単価の切り下げの圧力が、中小企業の経営を脅かしています。
需要が期待できる海外への設備投資の流出も加速しています。日本政策投資銀行の調査によると、昨年度から今年度にかけて国内の設備投資額に対する海外の設備投資額の割合が急上昇しています。
名目GDPの大幅減少は、財政危機の打開という面でも大きな打撃です。名目GDPに対する政府長期債務の割合は、経済力に比した借金の重さを示すことから財政の持続性の目安となっています。名目GDPが減少すれば、その分だけ借金の比重が高まってしまいます。
名目GDPが振るわない原因をデフレ(継続的な物価下落)に求める議論がありますが、物価を上げればいいというのは本末転倒です。物価下落の大もとでもある国内経済の停滞を解決することこそが必要です。
安定した経済成長へ
大企業の国際競争力が国内経済の回復に結びつくどころか、大企業が国内経済を犠牲にして海外で稼ぐ構造の矛盾が、今回のGDP統計にも表れています。大企業の国際競争力に頼った経済成長戦略を続ける限り、この矛盾から逃れられません。
求められるのは、大企業優先の経済成長戦略から暮らしと中小企業を優先する経済政策への転換です。人間らしい雇用のルール、大企業と中小企業との公正な取引ルールをつくることを通じて暮らし最優先の経済政策に切り替え、安定した経済成長を図る新たな成長戦略が必要です。