2010年8月14日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 その石碑は木陰にひっそりと立っています。東京・文京区の東京ドームの片隅にある「鎮魂の碑」です。戦争で命を落とした69人のプロ野球選手の名が刻まれています▼明日で終戦から65年。これらの選手を取り上げた催しが、11日に都内で開かれました。「かたり 戦火に散ったプロ野球選手」。「野球が大好き」というタレントの山田雅人さん(49)が、戦死した3選手を「語る」趣向です▼伝説の剛速球右腕・沢村栄治は、2度目の召集で左手を撃ち抜かれます。口を突いたのが「右手でなくてよかった」。どんなときも野球が頭を離れなかったのです▼名古屋軍のエース石丸進一は、特攻隊として飛び立つ直前に最後のキャッチボールをします。「おりゃぁ(俺(おれ)は)野球じゃ」と叫び、その無念の思いをボールにこめながら▼最後はわずかプロ2打席で召集された渡辺静。配属された鹿児島の知覧特攻基地で、なでしこ隊の女の子から人形を贈られます。「1人で飛行機に乗るのは寂しいでしょ」と。出撃前に彼はいいます。「俺は天皇や軍のために飛ぶのじゃない。あの子が夢を追いかけられる時代がくることを願うから」▼ときに激しく、ときに静かに「かたり」は続きました。すすり泣く声、じっとみつめる子どもたち。山田さんはこう結びます。「野球をやりたくともやれない時代があり、人たちがいた。二度と戦争をしないよう、皆さんも語りついでください」。平和を願う新たなエネルギーをもらった気がしました。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp