2010年8月12日(木)「しんぶん赤旗」

主張

泡瀬干潟埋め立て

むだな事業の再開を中止せよ


 政府が、沖縄県沖縄市の沖に広がる貴重な泡瀬干潟の埋め立て事業再開を一方的に認める方針を示したため、泡瀬干潟を守る運動をしている市民団体をはじめ県民が抗議し、再開中止を求めています。

 埋め立て事業は、那覇地裁判決も福岡高裁那覇支部判決も、「経済的な合理性がない」として県と市に事業のための公金支出の差し止めを命じています。そのため、前原誠司沖縄担当相も、東門美津子沖縄市長も、陸に近い第1区域の工事は「中断」、それ以遠の第2区域は「中止」といっていました。それを十分な説明もなく埋め立て再開を強行するのは重大です。

経済的合理性ないまま

 泡瀬干潟埋め立て計画は国の事業です。むだな公共事業を推進するものです。沖縄市と沖縄県は国の求めに応じて参入しています。日本最大級の290ヘクタールの干潟のうち約187ヘクタールを埋め立てて人工島をつくり、大型ホテルや観光商業施設などが立ち並ぶ一大リゾート地帯をつくります。開発事業はすでに第1区域約96ヘクタールのうち69ヘクタールのまわりに護岸を築き、土砂を投入しています。むだな公共事業はやめよという住民の声を無視した強引な国、市の態度に批判が強まっていました。

 もともとこの計画は裁判所が判決で指摘したように「経済的な合理性」がありませんでした。この10年間の経済的事情の大きな変化を受けて沖縄市が作成し、7月30日に発表した「見直し案」でも基本はまったく変わりません。

 「見直し案」は公共施設運営事業が赤字になると想定しています。かぎをにぎるとされるホテルなどの民間事業部門も、進出を希望する民間企業はいまだにわずか2社にすぎない状態です。沖縄市に隣接するうるま市の特別自由貿易地域化事業も用地が売れずに破たんしていることをみても、進出企業が増える見通しなどあるはずはありません。

 ホテルをつくれば年間13万人、1日平均350人もの客が宿泊するというのも現実的ではありません。自然が壊されたところに観光客が集まるというのは疑問です。

 高裁判決は「経済的な合理性があるか否か」は「相当程度に手堅い検証を必要とする」とのべています。しかし「見直し案」が「手堅い検証」のうえでつくられた形跡はありません。埋め立て事業に妥当性がないのは明白です。

 国も沖縄市もむだな埋め立て事業の推進を断念すべきです。

干潟保全は条約上の義務

 見過ごせないのは埋め立て事業によってすでに貴重な干潟が破壊されつつある事実です。埋め立てられている第1区域のなかで生息・生育してきたリュウキュウキッカサンゴや新種のホソウミヒルモなど貴重な生き物が失われています。それだけでなく干潟全体に深刻な影響が出始めています。

 潮の流れが変わり砂州の変形など地形が変化し、海草藻場が大規模に消失し、サンゴ群集の劣化もみられます。自然との共生を求めた自然再生推進法にも、日本政府も批准した多様な生物をその生息環境とともに保全することを目的とする生物多様性条約にも反する事態をこのままにできません。

 日本は10月に名古屋で開かれる生物多様性条約締約国会議の議長国です。泡瀬干潟を破壊しては議長国としての責任も問われます。





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