2010年8月12日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 「…遺族の1年は、8月12日からはじまり、翌年8月11日に終わる」。1985年の日航機墜落事故で小学3年の息子さんを亡くした美谷島邦子さんが、『御巣鷹山と生きる』に書いています▼あの8月12日にまわり始めた時計の針は、25年の月日を刻んできました。親族4人が逝った、当時3歳の男の子は、のちに訴えました。「日航のおじさん、天国にでんわをつけて」▼事故から4カ月余りたち、美谷島さんたちは「8・12連絡会」を結成します。遺族の集まりです。会の名前に「遺族」の2文字を入れなかったきっかけは、遺族の集会でのある女性の発言でした▼「喪服を何度も着た。…その度に打ちひしがれた姿を期待された。でも、もう下を向きながら生きていくことに終止符を打ちたい。…なぜ、最愛の人が死ななければならなかったかを世に問い、亡くなった人の分まで生きたい。遺族という文字は削ってください」▼遺族同士が助け合いながら、なにより世界の空の安全を願ってきた8・12連絡会。その活動は、政府や日航を動かし、さまざまな事故の遺族との連帯をはぐくんでいます。2年前、日航機が落ちた御巣鷹山を8・12連絡会の遺族とともに、JR西日本福知山線事故や信楽高原鉄道事故、明石歩道橋事故などの遺族が登りました。思いは同じ、「2度と起こらないように」です▼きょう、遺族たちはまた新しい年を迎えます。いつ誰が「遺族」となるか分からない危うさの潜む、社会のあり方を問い続けながら。





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