2010年8月10日(火)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 昨日は長崎が被爆して65年の日でした。思い出す人がいます。元長崎放送記者の伊藤明彦さん。長崎で原爆投下後に被爆地に入り被爆しました▼1970年代から72歳で亡くなる昨年まで、被爆者を訪ね歩き肉声を録音する毎日でした。収録した証言は千数百人。インターネットで「被爆者の声」として日本語と英語で世界に発信していました▼「核兵器の非人間性が、私の内なる人間性に働きかけ、記録を続けさせる」と話していたのが忘れられません。インターネット時代の到来に「アメリカの青年に被爆者の声を聞かせられる」と期待していました▼現在もインターネット上の「被爆者の声」はNPO法人が運営し、伊藤さんが104人の被爆者に聞いた録画を公開しています。昨日、長崎の平和式典で「平和への誓い」を述べた内田保信さんが友人宅でゲタ作りの最中に被爆した話もあります。そこで内田さんは核兵器廃絶の署名運動、平和運動の力を熱く語っています▼「平和への誓い」の力強さに通じるでしょうか。内田さんは「日本は核の傘から完全に離脱し、非核三原則を法律として確立し、順守することが必要です」と。そして、「核兵器のない世界は必ずできる」と▼伊藤さんはこんな言葉を残しています。「本当の『抑止力』は、ヒロシマ・ナガサキの被爆の実相を、私たちが克明に、より具体的に知り、核兵器不使用、核兵器廃絶の意思を固め、広げることの中にこそある」。歴史の証言者の言葉の重みをかみしめたい。





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