2010年8月8日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
30人が、2日後の朝は58人に。同日夕には61人。居場所の分からない100歳以上のお年寄りの数が、次々とふえています▼忽然(こつぜん)と足取りが途絶え、どこかに消えた女性。「即身成仏」を願ったという、ミイラ化していた男性。推理小説さながら、いや「事実は小説より奇なり」を地でゆくできごとに、身をつまされます▼一見すると繁栄をふりまく、経済大国の都市の文明。しかし一皮むけば、お年寄りが高度に整っているはずの行政の網の目からも抜け落ち消える、不条理の闇があちこちに。いったい、お年寄りたちはどこへ? 人それぞれの事情があるにしても、孤独の気配だけは伝わってきます▼いま行方不明の人たちの身の上と交わるかどうか分かりませんが、気になる事実があります。肩身の狭い思いをして生きるお年寄りが、たしかに多い。長生きしたら周りに迷惑をかける。子どもたちにも手を焼かせ、申し訳ない。近ごろは、若い世代の邪魔になる、と考える人もいます▼高齢者や老人予備軍の団塊世代は雇用とか年金で恵まれ、特権をまもろうと若者を“搾取”している。そんな図式をおしつけるテレビ番組もあります。ある若者がみて、首をかしげたそうです。「おれらフリーターだったから、親や祖父母に世話になり支えられた。番組は実感と違う」▼財界や政府が仕組んだ対立です。しかし、「長生きは迷惑」と思い込ませる風潮、それをあおる政治が続くなら、お年寄りをいっそう孤立に追いやる気がしてなりません。