2010年8月7日(土)「しんぶん赤旗」

主張

高齢者行方不明

社会的「孤立」なくす対策こそ


 100歳を超えたとでもなれば、家族も周りの人たちも心からお祝いしているはずなのに、実は数十年前から行方不明になっていた―そんな信じられないような事態が、全国各地で相次いでいます。

 失踪(しっそう)なのか、すでに亡くなっているのかなど、真相は明らかにされなければなりませんが、事態が浮き彫りにしているのは、急速に進行する高齢化のなかで高齢者の社会的孤立が深刻化していることです。高齢者の孤立を解決することこそ抜本的な対策です。

一人暮らしで頼る人ない

 都内足立区で111歳といわれた男性が白骨遺体で見つかった、杉並区では113歳といわれた女性が数十年前から行方不明になっていた、長野県や名古屋市でも長期にわたり行方不明の高齢者が問題になっていた…。100歳以上の行方不明者は、明らかになっただけでもすでに全国で数十人規模にのぼっています。

 事情はさまざまです。本人の意思による家出や、だれにもみとられず息をひきとったという例もあるでしょう。しかし、なんといっても納得がいかないのは、住民登録などを残したまま行方が分からなくなって何年も何十年もたつのに、家族や近所も、年金・医療を管轄する行政も、問題にせず、時間だけが経過していることです。

 最初の問題になった足立区の男性の場合は、最近まで地域を担当していた民生委員の女性が異常に気づき、区役所や警察と連携したことで発見されました。しかし亡くなってから30年以上というのはあまりに遅すぎます。しかもそれ以外の多くは、いつどのようにしていなくなったのかさえわからないという例が少なくありません。共通して浮き彫りになっているのは、かねて指摘されてきたように、家族を含め、社会から断ち切られた高齢者の「孤立」という深刻な社会状況です。

 今年の政府の「高齢社会白書」は、遅ればせながら、「高齢者の社会的孤立」について一項を立て、「一人暮らしで、困ったときに頼れる人がいない」とか、「ふだん、近所の人との付き合いがほとんどない」という人が急増していることを明らかにしています。行方不明問題は、その矢先の出来事です。

 高齢者の「孤独死」や「孤立」の背景には、急速な高齢化と一人暮らしの増加だけでなく、都市化によるコミュニティーの崩壊、さらには病気や貧困など複雑で多岐にわたる原因が考えられます。しかし、今日問題になっている行方不明者の問題を、高齢者・家族の社会的「孤立」状況が深刻化しているとの視点に立って見直せば、必要な対策も見えてきます。

つながりから支えあいに

 ひとつは行政の責任です。かつて東京の一部では「敬老祝い金」を高齢者を訪問して渡していたが、廃止されたとたん訪問することもなくなったという報道がありました。介護保険導入を機に、高齢者福祉に対する行政の責任が大幅に後退したことも見逃せません。安否確認など、行政による見守りと支援体制強化が急がれます。

 地域でも高齢者に声を掛け、支えあう取り組みが各地で始まりだしていますがこれへの行政の支援も必要です。「孤立」から「つながり」そして「支え合い」へという「高齢社会白書」のことばを、掛け声だけにしない対策が重要です。





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